リトル・ショップ・オブ・ホラーズ;ritorushoppu・obu・horazu

歴代SF映画情報

リトル・ショップ・オブ・ホラーズ

『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』(Little Shop of Horrors)は、1986年に公開されたアメリカのミュージカル・コメディ・ホラー映画です。1960年のロジャー・コーマン監督による同名低予算映画を原作とし、それを基にフランク・オズ監督によってミュージカル映画としてリメイクされました。原作のブラックユーモアと、ミュージカルの華やかさ、そしてホラー要素が融合した独特の世界観が魅力です。

制作背景と原作

ロジャー・コーマン版

『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』の原点は、1960年に公開されたロジャー・コーマン監督の同名低予算映画にあります。この映画は、貧しい植物店で働く主人公が、謎の植物「オードリーII」を育てるうちに、それが人間を捕食する恐ろしい存在へと変貌していく様を描いています。低予算ながらも、ブラックユーモアと斬新なアイデアでカルト的な人気を博しました。

ミュージカル化への道

1980年代に入り、この原作に目をつけたのが、後の監督となるフランク・オズです。彼は、原作の持つユーモアとホラーの要素を活かしつつ、ミュージカルという形での再構築を試みました。オフ・ブロードウェイでのミュージカル上演を経て、その人気が映画化へと繋がりました。

ストーリー概要

物語の舞台は、ニューヨークの貧しい地区にある、寂れた花屋「シーモアの植物店」です。主人公は、内気で冴えない店員シーモア(リック・モラニス)。彼は、同僚で憧れの女性オードリー(エレイン・ヘンクス)に片思いしていますが、彼女は歯科医の歯科医(スティーヴ・マーティン)という暴君と付き合っていました。

ある日、シーモアは店で奇妙な植物を見つけます。「オードリーII」と名付けられたその植物は、血を餌にすると驚異的な速さで成長し、不思議な歌を歌い始めます。最初は店を繁盛させるための切り札として喜ばれたオードリーIIでしたが、やがてその食欲はエスカレートし、人間を要求するようになります。シーモアは、オードリーIIの要求に応えるために、恐ろしい決断を迫られることになります。

登場人物とキャスティング

シーモア・クレルボーン

演:リック・モラニス
内気で心優しい植物店員。オードリーIIという恐ろしい植物を育ててしまう。彼の成長と葛藤が物語の中心となります。

オードリー

演:エレイン・ヘンクス
シーモアが憧れる、心優しいが不幸な女性。彼女の名前が植物に付けられています。

オーソン・バロック dentists

演:スティーヴ・マーティン
オードリーの恋人で、サディスティックな歯科医。強烈なキャラクターで、観客に強烈な印象を残します。

パディッシュ

演:ヴィンセント・ガーデニア
シーモアの雇い主である、頑固でケチな花屋の店主。

オードリーII

声:レヴァイ・スタブス
物語の鍵を握る、血を吸う植物。その成長と共に、声のトーンも変化していきます。

音楽と楽曲

『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』は、ミュージカル映画としての側面も強く、その音楽は高く評価されています。作曲はアラン・メンケン、作詞はハワード・アッシュマンが担当しており、後のディズニー・ミュージカル作品の成功にも繋がる彼らの才能が光ります。

代表的な楽曲

  • 『Little Shop of Horrors』:オープニングを飾る、物語の舞台と雰囲気を紹介する楽曲。
  • 『Skid Row (Downtown)』:貧しい地区に住む人々の生活を歌った楽曲。
  • 『Somewhere That’s Green』:オードリーの、夢と現実のギャップを歌った切ないバラード。
  • 『Feed Me (Git It)』:オードリーIIがシーモアに要求する、特徴的な楽曲。

これらの楽曲は、キャッチーなメロディーと物語に深みを与える歌詞で、観客の心を掴みます。

映画の特徴と魅力

ブラックユーモアとホラーの融合

本作の最大の魅力は、ブラックユーモアとホラーが絶妙に融合している点です。グロテスクな描写もありつつ、それをコミカルに描くことで、観客は笑いと恐怖を同時に体験することができます。

個性的なキャラクター

登場人物たちは皆、強烈な個性を持っています。内気なシーモア、不幸なオードリー、そして暴君のような歯科医など、それぞれのキャラクターが物語を牽引します。特に、スティーヴ・マーティン演じる歯科医は、その狂気的な演技で強烈な印象を残します。

独創的なビジュアルとクリーチャーデザイン

「オードリーII」のデザインは、初期の小さな植物から、徐々に巨大で恐ろしい存在へと変化していく様が視覚的に楽しめます。 puppetry(操り人形)と特殊効果が巧みに使われています。

ミュージカルとしての完成度

アラン・メンケンとハワード・アッシュマンによる楽曲は、耳に残るメロディーと、物語の展開を巧みに彩る歌詞で、映画全体を盛り上げています。ミュージカルシーンは、華やかでエネルギッシュでありながら、キャラクターの内面を表現する重要な要素となっています。

まとめ

『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』は、ブラックユーモア、ミュージカル、ホラーといったジャンルを巧みに組み合わせた、ユニークで中毒性の高い作品です。ロジャー・コーマンの原点を踏襲しつつ、ミュージカル映画としてのエンターテイメント性を追求したフランク・オズ監督の手腕は高く評価されます。リック・モラニスの繊細な演技、エレイン・ヘンクスの魅力、そしてスティーヴ・マーティンの怪演はもちろんのこと、アラン・メンケンとハワード・アッシュマンによる素晴らしい楽曲の数々は、この映画を単なるホラーコメディ以上のものにしています。

「オードリーII」という奇妙で恐ろしい植物の成長を通して描かれる、人間の欲望、弱さ、そして倫理的な葛藤は、観る者に深く考えさせられます。同時に、その恐ろしさをコミカルに描くことで、独特のエンターテイメントを提供しています。一度観たら忘れられない、カルト的人気を誇る名作と言えるでしょう。

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