第三次世界大戦　四十一時間の恐怖;daisanjisekaitaisenyonjuichijikannokyofu

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映画：第三次世界大戦 四十一時間の恐怖 (1964)

作品概要

「第三次世界大戦 四十一時間の恐怖」（原題: Fail Safe）は、1964年に公開されたアメリカのシリアスなスリラー映画です。監督はシドニー・ルメット、主演はヘンリー・フォンダ。冷戦下における核戦争の恐怖を、極めて現実的かつ緊迫感あふれる演出で描いています。原作者はユージン・バーストとハーヴェイ・バーストの兄弟で、同名の小説が原作となっています。

物語の舞台は、ソビエト連邦とアメリカ合衆国の緊張が極限に達した冷戦時代。アメリカ軍の誤作動により、ソ連への核攻撃を命じられた爆撃機部隊「グローリー・ボーイズ」が、意図せずしてソ連本土へと向かってしまうところから始まります。この悲劇的な誤算が、世界を未曽有の危機へと突き落とします。

あらすじ

事件の発生

物語は、ニューヨークのNORAD（統合宇宙防衛司令部）のレーダー網に、ソ連の核攻撃と誤認されるべき異常な信号が捉えられるところから始まります。しかし、それはアメリカ軍のサイバー攻撃対策プログラムの誤作動であり、ボストン近郊の「フォスター」と呼ばれる特殊な施設に配置された「グローリー・ボーイズ」と呼ばれるB-52戦略爆撃機部隊に、ソ連への無差別攻撃を命じる暗号信号として誤って送信されてしまいます。

誤作動と指令

「グローリー・ボーイズ」の機長であるジャック・グリド（フリッツ・ウェーバー）は、この指令が本物であると確信し、規則に従ってソ連領空へと針路を取ります。しかし、ワシントンD.C.では、この異常事態がすぐに察知されます。大統領（ヘンリー・フォンダ）と国防長官、そしてソ連とのホットラインを繋ぐことのできる専門家たちが、事態の収拾に奔走します。

沈黙の交渉

大統領は、ソ連への攻撃を阻止するためにあらゆる手段を講じようとしますが、「グローリー・ボーイズ」は厳重な暗号化と厳格なプロトコルによって制御されており、外部からの指令を一切受け付けません。彼らは、自分たちの任務が祖国のためであると信じ、目標へと突き進みます。

一方、ソ連側はアメリカの攻撃を明白な宣戦布告と受け止め、報復の準備を開始します。世界は、数時間で終末を迎える可能性に直面します。大統領は、ソ連の指導者との絶望的な交渉を試みます。しかし、言語の壁や相互不信が、事態をさらに悪化させます。

究極の選択

事態が絶望的になる中、大統領は究極の選択を迫られます。ソ連への核攻撃を防ぐ唯一の方法は、ソ連の首都モスクワを自らの手で核攻撃することだと判断されます。これは、アメリカの完全な敗北と、ソ連による報復を意味する、悲劇的で苦渋の決断でした。

キャスト

• ヘンリー・フォンダ：アメリカ合衆国大統領
• ダン・オハーリー：副大統領
• フリッツ・ウェーバー：「グローリー・ボーイズ」機長ジャック・グリド
• ローレンス・ハーヴェイ：ボストン・グッドウィン博士
• ジョン・メダル：将軍
• ドナルド・オッフェン：国防長官

スタッフ

• 監督：シドニー・ルメット
• 原作：ユージン・バースト、ハーヴェイ・バースト
• 脚本：エルマー・ライス
• 製作：フランク・P・ローゼンバーグ
• 撮影：アーサー・J・ネルソン
• 音楽：エリス・クラーク

テーマとメッセージ

「第三次世界大戦 四十一時間の恐怖」は、核戦争の無意味さと愚かさを強烈に訴えかけます。映画は、技術的誤作動や人間的な判断ミスが、いかに容易く世界を破滅へと導くかを描き出しています。また、冷戦下の政治的駆け引きや軍事的なプロトコルが、いかに非人間的で危険であるかをも浮き彫りにします。

本作は、偶然と必然、責任と回避といった、人間の不確実性と脆弱性を深く掘り下げています。大統領が最終的に下す決断は、救済ではなく、破滅の共有という、極めて暗い結末をもたらします。この映画は、観客に平和の尊さと、理性の重要性について、重い問いを投げかけます。

製作背景と評価

本作は、スタンリー・キューブリック監督の「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」（1964年）と同時期に公開された核戦争をテーマにした映画です。両作は、核戦争というテーマを異なるアプローチで描いていますが、「第三次世界大戦 四十一時間の恐怖」は、よりシリアスで現実的なトーンで描かれており、その緊張感とリアリズムは高く評価されています。

公開当時、本作は商業的な成功は収めませんでしたが、その社会的なメッセージ性と芸術性から、カルト的な人気を博し、映画史に残る作品として再評価されています。特に、終盤の衝撃的な展開は、多くの観客に深い印象を与えました。

まとめ

「第三次世界大戦 四十一時間の恐怖」は、冷戦時代の核戦争の恐怖を極めてリアルに描き出した、必見のスリラー映画です。シドニー・ルメット監督の的確な演出と、ヘンリー・フォンダ演じる大統領の苦悩が、観る者に重い衝撃を与えます。技術の暴走や人間の過ちが、いかに破滅的な結果を招くかを痛烈に訴えかける本作は、平和について深く考えさせられる、時代を超えた名作と言えるでしょう。

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