謎の大陸アトランティス;nazonotairikuatoranteisu

歴代SF映画情報

謎の大陸アトランティス

概要

「謎の大陸アトランティス」(原題: Atlantis: The Lost Empire) は、2001年に公開されたウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ製作の長編アニメーション映画です。

監督はジョン・ピザ、カーク・ワイズ。脚本はトッド・エドワーズ、コーネル・ライアン。音楽はジェームズ・ニュートン・ハワードが担当しています。

本作は、失われた古代文明アトランティスの謎を解き明かす冒険を描いた作品であり、ディズニー・アニメーションとしては比較的珍しい、SFアドベンチャーの要素が強い作品として知られています。

公開当時、アニメーションのスタイルやストーリーテリングにおいて、従来のディズニー作品とは一線を画す斬新さが注目されました。

あらすじ

物語は、20世紀初頭の米国から始まります。主人公は、変わり者として周囲から疎まれながらも、アトランティスの存在を信じ続ける若き言語学者であり地図製作者のマイロ・サッチです。

マイロは、祖父が遺した謎の巻物を解読し、アトランティスへの道を示す「羊飼いの石」を手に入れます。彼は、この失われた大陸を探し出すという長年の夢を叶えるため、莫大な資金援助を申し出た富豪のプレストン卿が組織した探検隊に加わることになります。

探検隊は、巨大な潜水艦「ネイラー号」に乗り込み、氷山を通過するなど困難な旅を経て、ついに地球の深海に隠されたアトランティス大陸へと到達します。

そこには、驚くべきことに、古代の文化や技術を保持し、驚異的な水晶エネルギーを操る人々が平和に暮らしていました。彼らは、かつて地上文明と交流がありましたが、ある悲劇をきっかけに、自らを封印し、外界から隔絶された生活を送っていたのです。

マイロは、アトランティスの王女であるキーラと出会い、彼女の助けを借りてアトランティスの言語や文化を学び始めます。マイロは、アトランティス人の知恵と平和な暮らしに感銘を受け、彼らとの交流を深めていきます。

しかし、探検隊の中には、アトランティスの秘宝である「心の水晶」を金儲けの道具にしようと企む者もいました。特に、冷酷で欲深い隊長のリク・サーは、アトランティスの平和を脅かす存在となります。

マイロは、キーラやアトランティス人たちと共に、リク・サーたちの野望を阻止し、アトランティスを救うために立ち上がります。壮絶な戦いの末、マイロたちはアトランティスを守り抜くことができるのでしょうか。そして、マイロ自身の運命は、どのように変化していくのでしょうか。

登場人物

マイロ・サッチ

本作の主人公。温厚で誠実な性格ですが、アトランティスの研究に情熱を燃やす、やや風変わりな若者です。周囲からは理解されにくいですが、その真面目さと知的好奇心は、アトランティスを救う鍵となります。

キーラ

アトランティスの王女。美しく聡明で、民を深く愛しています。外界から隔絶された生活を送ってきましたが、マイロとの出会いにより、新たな可能性に目覚めていきます。アトランティスの伝統と、マイロの異文化への好奇心との橋渡し役となります。

リク・サー

探検隊の隊長。表向きは優秀で頼りがいのある人物ですが、その内面には強欲さと冷酷さを秘めています。アトランティスの宝を独り占めしようと画策し、物語の主要な敵対者となります。

プレストン卿

マイロに資金援助をする富豪。アトランティス探検に私財を投じますが、その真の目的は、アトランティスの貴重な財宝を我が物にすることにあります。

ガド

アトランティスの屈強な戦士。キーラに忠実で、マイロとも次第に信頼関係を築いていきます。アトランティスの文化や戦い方を体現する存在です。

ヴィルマ

アトランティスの賢者。アトランティスの歴史や水晶エネルギーに関する知識を持っています。

ルイ

探検隊の一員。陽気で楽天家な料理人。チームのムードメーカーです。

オービル

探検隊の一員。風変わりな無線技士。数々の奇妙な発明品を生み出します。

制作背景と特徴

「謎の大陸アトランティス」は、ディズニー・アニメーションとしては珍しく、伝統的なミュージカル要素を排除し、アクションやアドベンチャーに重点を置いた作品です。これは、当時のディズニーが、より幅広い観客層にアピールするための新しい試みでした。

キャラクターデザインや背景美術は、スタジオジブリの近藤勝也氏や、SFアーティストのハンス・ギューゲル氏などが参加しており、独特で魅力的な世界観を創り出しています。特に、アトランティスの水中都市の描写は、幻想的で壮麗です。

CG技術も積極的に導入されており、潜水艦「ネイラー号」やアトランティスの水中都市の表現において、その効果を発揮しています。これは、当時のアニメーション映画としては先進的な試みでした。

また、アトランティス人の言語を、著名な言語学者であるマーク・オークランド氏が考案したという点も特筆すべきです。これにより、アトランティスの文化にリアリティと深みが与えられています。

しかし、公開当時、興行収入は期待されたほど伸びず、批評家からの評価も賛否両論となりました。従来のディズニー作品のファンからは、その作風の違いに戸惑いの声も上がりました。

一方で、SFアドベンチャーとしての面白さ、独創的な世界観、そしてキャラクターの魅力などを評価する声も多く、カルト的な人気を誇る作品でもあります。

テーマとメッセージ

本作には、いくつかの重要なテーマが込められています。

知的好奇心と探求心

主人公マイロの、未知の世界への探求心と、アトランティスの真実を解き明かそうとする情熱は、観る者に勇気を与えます。諦めずに夢を追いかけることの大切さが描かれています。

文化の尊重と異文化理解

マイロがアトランティス文化に触れ、その美しさや知恵を理解していく過程は、異文化を尊重することの重要性を示唆しています。また、アトランティス人が外界からの侵略者とどのように向き合うか、という点も、相互理解の必要性を訴えかけています。

greed vs. integrity

リク・サーたちの greed(強欲)と、マイロやキーラたちの integrity(誠実さ、高潔さ)との対比は、本作の核心的なメッセージの一つです。物質的な豊かさよりも、精神的な豊かさや平和が大切であることが示されています。

保全と責任

アトランティスという失われた文明を、どのように未来へ繋いでいくのか、という問いは、現代社会における文化遺産の保全や、過去の教訓を未来に活かすことの重要性を示唆しています。

音楽

ジェームズ・ニュートン・ハワードによる音楽は、映画の冒険心を掻き立てる壮大なスコアで、アトランティスの神秘的で幻想的な世界観を効果的に演出しています。

特に、アトランティスに到達した際の「Atlantis」や、アクションシーンを盛り上げる「The Crystal Chamber」などは、聴く者に強い印象を与えます。

まとめ

「謎の大陸アトランティス」は、ディズニー・アニメーションの伝統を踏まえつつも、新しい試みが随所にみられる意欲作です。SFアドベンチャーとしてのエンターテイメント性、独創的な世界観、そして普遍的なメッセージは、公開から時を経た今もなお、多くのファンに愛され続けています。

従来のディズニー作品とは異なる、大人も楽しめる重厚なストーリーと、細部までこだわり抜かれた映像美は、一度観る価値のある作品と言えるでしょう。

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