あらしの惑星(火を噴く惑星)

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映画:あらしの惑星(火を噴く惑星)

概要

『あらしの惑星』(原題:Red Planet)は、2000年に公開されたアメリカのSFアクション映画である。監督はアントニー・ホフマン。主演はヴァル・キルマー、キャリー=アン・モス、トム・サイズモア、テレンス・ハワード、ジェームズ・クロムウェル。地球の滅亡が迫る中、人類の移住先として有望視されていた火星で、予期せぬ事態に直面する宇宙飛行士たちのサバイバルを描く。

あらすじ

2057年、地球は環境破壊により死に絶えつつあった。人類は、唯一の希望として火星への移住計画を進めていた。火星のテラフォーミング(地球化)に必要な生物「クリプタス」が発見されたが、その繁殖には問題が生じる。火星軌道上に設置された巨大な鏡で太陽光を反射させ、火星の気温を上昇させる計画が進行中であった。

しかし、太陽光を反射させるための燃料となる「アンモニウム」の生産が計画通りに進まず、火星の環境は依然として過酷なままだった。そこで、地球から選抜された宇宙飛行士チーム「マーズ・ワン」が、火星に送り込まれる。彼らの任務は、火星の過酷な環境で「クリプタス」を繁殖させ、地球への移住を可能にすることである。

クルーは、司令官のチャールズ・ウィテカー(トム・サイズモア)、パイロットのカーター・バーク(ヴァル・キルマー)、植物学者のキアラ・フローレンス(キャリー=アン・モス)、通信担当のジェローム・コヴィン(テレンス・ハワード)、そしてチーフエンジニアのボブ・ポメロイ(サイモン・ペッグ)といったメンバーで構成されていた。

火星への到着後、彼らは予想外の事態に遭遇する。母船からの信号が途絶え、通信が不可能になる。さらに、通信システムを修理しようとしたポメロイが、火星の過酷な環境と未知の生命体によって命を落としてしまう。残されたクルーは、限られた物資と情報で、火星の砂嵐や低温、そして謎の「クリプタス」の異常な増殖といった数々の困難に立ち向かうことになる。

クルーは、地球でクリプタスの解析を担当していた科学者、ローレンス・マークス(ジェームズ・クロムウェル)が、クリプタスを過剰に培養し、危険な生物兵器として利用しようとしていたことを知る。火星の極限環境で、人間は生き延びることができるのか。そして、地球を救うための希望は、絶望へと変わってしまうのか。クルーたちは、それぞれの知恵と勇気を振り絞り、生還を目指す。

キャスト

  • ヴァル・キルマー:カーター・バーク
  • キャリー=アン・モス:キアラ・フローレンス
  • トム・サイズモア:チャールズ・ウィテカー
  • テレンス・ハワード:ジェローム・コヴィン
  • ジェームズ・クロムウェル:ローレンス・マークス
  • サイモン・ペッグ:ボブ・ポメロイ

制作背景

『あらしの惑星』は、SF映画の巨匠スタンリー・キューブリックが監督する予定であった企画を、アントニー・ホフマンが引き継いで映画化した作品である。当初は『アウター・リミッツ』のようなサイエンス・フィクション・スリラーとして企画されていたが、制作過程でアクション要素が強められた。

火星の風景は、NASAが提供した火星の実際の画像や地形データを基に、CGで忠実に再現されている。また、宇宙服や宇宙船のデザインも、現実的な考証に基づいて作られており、SF作品としてのリアリティを高めている。

撮影は、オーストラリアの砂漠地帯や、スタジオセットで行われた。火星の過酷な環境を表現するために、砂嵐のシーンは、実際の砂漠で強風を発生させて撮影された。

しかし、制作過程で監督とプロデューサーの間で意見の対立が生じ、完成した作品の編集権を巡って法廷闘争にまで発展したという逸話もある。これにより、当初の構想から大きく変更された部分もあるとされている。

テーマと批評

本作は、人類の生存をかけた壮大な宇宙探査というテーマを扱っている。地球環境の悪化という現代社会が抱える問題ともリンクしており、視聴者に警鐘を鳴らす側面も持つ。

一方で、物語の展開やキャラクター描写については、賛否両論があった。SFアクションとしてのエンターテイメント性は評価されたものの、ストーリーの論理性やキャラクターの深みに欠けるという意見もあった。特に、物語の終盤における科学的な設定や展開については、批判的な声も少なくなかった。

しかし、ヴァル・キルマー演じるカーターの、極限状況下での葛藤や人間らしさ、そしてキャリー=アン・モス演じるキアラの冷静沈着で知的なキャラクターは、一定の評価を得ている。また、火星という未知の惑星の不気味さや美しさを描き出した映像表現も、視覚的な魅力として挙げられる。

関連作品

『あらしの惑星』は、火星を舞台にしたSF映画の系譜に連なる作品の一つである。同様のテーマを扱った作品としては、リドリー・スコット監督の『オデッセイ』(2015年)、ジョン・カーペンター監督の『ゴースト・オブ・マーズ』(2001年)などが挙げられる。これらの作品と比較することで、本作の独自性やSF映画における火星描写の変遷を理解することができる。

まとめ

『あらしの惑星』は、地球滅亡の危機に瀕した人類が、火星への移住を試みる中で直面する極限のサバイバルを描いたSFアクション映画である。壮大なスケールと、火星という未知の惑星の映像表現は、観る者を惹きつける。物語の展開や科学的な考証には賛否両論あるものの、極限状況下での人間の葛藤や、SF映画ならではのロマンを感じさせる作品と言えるだろう。人類の未来への希望と、未知なるものへの畏怖が交錯する、見応えのある作品である。

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