グレートレース

歴代SF映画情報

グレートレース:詳細・その他

作品概要

『グレートレース』(原題:The Great Race)は、1965年に公開されたアメリカ合衆国のスペクタクル・コメディ映画である。監督はブレイク・エドワーズ。製作費は当時としては破格の約1200万ドルを投じられ、そのスケールの大きさ、斬新なギャグ、そして豪華なキャストで、公開当時から現在に至るまで多くのファンに愛されている作品である。

あらすじ

物語は、1908年、自動車の黎明期を舞台としている。野心的なアメリカ人冒険家レスリー・タウンゼント博士(トニー・カーティス)は、世界初の自動車横断レースを企画する。このレースは、ニューヨークからパリまで、数々の困難な地形を越えて競うという、まさに前人未到の挑戦であった。

博士は、この偉業を報道するため、新聞記者のメギー・ジョーンズ(ナタリー・ウッド)を同行させる。メギーは、当初は博士の冒険を好奇心から取材するが、次第にその情熱と人柄に惹かれていく。

しかし、このレースには、博士のライバルであるイギリス人の詐欺師プロフェッサー・カリング(ジャック・レモン)が、不正な手段を駆使して妨害してくる。カリングは、博士の車に細工をしたり、予期せぬトラブルを引き起こしたりと、レースを混乱させようと企む。

レースは、砂漠、雪山、ジャングルなど、想像を絶する過酷な環境を舞台に展開される。博士とメギーは、カリングの妨害に苦しみながらも、数々のユーモラスなアクシデントを乗り越え、友情と愛情を育みながら、ゴールを目指す。

キャスト

本作の魅力の一つは、その豪華なキャスト陣である。

  • トニー・カーティス:レスリー・タウンゼント博士役。勇敢で楽天的な冒険家を魅力的に演じる。
  • ナタリー・ウッド:メギー・ジョーンズ役。ジャーナリストとしての鋭さと、ヒロインとしての可愛らしさを兼ね備える。
  • ジャック・レモン:プロフェッサー・カリング役。悪役ながらも、どこか憎めないキャラクターを怪演。彼のコメディセンスが光る。
  • ピーター・フォーク:ヘンリー・グッドボトム役。カリングの相棒で、コミカルな演技で観客を笑わせる。

見どころ

スペクタクルな映像とアクション

本作は、1960年代の映画としては驚異的なスケールで撮影されている。広大な砂漠、雄大な雪山、そして密林といったロケーションでのカーチェイスやアクションシーンは、圧巻の一言に尽きる。特に、パリの街並みでのフィナーレは、映画史に残る名シーンとして知られている。

斬新でハイテンションなギャグ

ブレイク・エドワーズ監督ならではの、視覚的でテンポの良いギャグが満載である。物理法則を無視したようなアクロバティックな動きや、予期せぬ展開から生まれるユーモアは、観る者を引きつけ、笑いの渦に巻き込む。ジャック・レモン演じるカリングの奇想天外な発明品も、ギャグの大きな要素となっている。

ロマンスと友情

過酷なレースの中で、レスリー博士とメギーの間に芽生えるロマンスは、本作のもう一つの大きな魅力である。単なる冒険活劇に終わらず、二人の心の交流が丁寧に描かれている。また、ライバルであるはずの博士とカリングの間にも、奇妙な友情が芽生える瞬間があり、物語に深みを与えている。

音楽

ヘンリー・マンシーニが手掛けた主題歌「The Sweetheart Tree」は、アカデミー歌曲賞にノミネートされるなど高く評価された。軽快でリズミカルな楽曲は、映画の陽気で冒険的な雰囲気を盛り上げ、観客の気分を高揚させる。

製作の背景

『グレートレース』の製作は、当時のハリウッドにおける大規模なプロジェクトの一つであった。監督のブレイク・エドワーズは、『ピンク・パンサー』シリーズで培ったコメディセンスを本作でも存分に発揮している。

映画に登場する自動車も、当時の最新技術を駆使した特注品が多く、そのデザインや機能も観る者を飽きさせない。特に、プロフェッサー・カリングが使用する奇妙な発明品は、当時のSF的な想像力を掻き立てるものであった。

撮影は、アメリカ各地の砂漠、スイスのアルプス、そしてヨーロッパ各地で行われ、その壮大なロケーションも話題となった。

評価と影響

『グレートレース』は、公開当時、批評家からは賛否両論あったものの、興行収入においては大成功を収め、カルト的な人気を確立した。その斬新なコメディスタイルと、大規模なスペクタクルは、後の多くのコメディ映画に影響を与えたと言われている。

特に、コミカルな悪役を演じるジャック・レモンの演技は高く評価されており、彼のキャリアにおける代表作の一つとなった。また、ナタリー・ウッドのキュートさと知的な演技も、作品の魅力を一層引き立てている。

まとめ

『グレートレース』は、単なるカーアクション映画ではなく、ユーモア、ロマンス、そして友情が絶妙に織り交ぜられた、エンターテインメント性の高い傑作である。その色彩豊かな映像、エキセントリックなキャラクター、そして時代を超えて愛されるギャグは、今なお観る者を楽しませてくれる。自動車がまだ珍しかった時代の冒険心と、人間の持つユーモアの精神を、壮大なスケールで描いた本作は、家族や友人と一緒に楽しめる、まさに「グレート」な映画と言えるだろう。

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