映画:クレージーだよ 奇想天外
概要
1966年に公開された、クレージーキャッツ主演のドタバタコメディ映画。植木等、ハナ肇、谷啓、犬塚弘、桜井センリ、安田伸といった、当時の人気絶頂にあったクレージーキャッツのメンバーが総出演し、彼らならではのナンセンスで痛快なギャグと、植木等の歌声が満載の作品です。監督は、渡邊祐介が務めています。
本作は、クレージーキャッツが活躍した「無責任シリーズ」とは一線を画し、よりSF的な要素を取り入れた「奇想天外」な世界観が特徴です。宇宙人、UFO、タイムトラベルといった当時としては斬新なテーマを扱いながらも、クレージーキャッツらしい底抜けの明るさと、人間味あふれるキャラクターたちが織りなす物語は、観る者を惹きつけます。
あらすじ
物語は、平凡なサラリーマンである植木等(植木本人)が、ある日突然、未来から来たという宇宙人、ハナ肇(ハナ本人)と出会うところから始まります。ハナは、遠い未来から地球に危機が迫っていることを告げ、植木に協力を求めます。しかし、植木は極度の臆病者で、日々の生活に追われるばかり。そんな植木が、ハナの強引な(そしてどこか憎めない)ペースに巻き込まれ、次第に冒険へと駆り出されていきます。
彼らの前に立ちはだかるのは、地球征服を企む悪の宇宙人軍団。谷啓(谷本人)演じる謎の科学者や、犬塚弘(犬塚本人)演じる謎の組織のリーダーなど、個性的なキャラクターたちが次々と登場し、物語は予測不能な展開を見せます。CG技術が未熟な時代だからこそ、手作りの特撮やコミカルな演出が光り、独特の映像美を生み出しています。
植木は、ハナと共に様々な困難に立ち向かい、時には仲間たちの助けを借りながら、地球の平和を守るために奮闘します。その過程で、植木は自身の臆病さを克服し、勇気ある行動をとるようになります。そして、クライマックスでは、植木等が持ち前の歌声で、宇宙人たちをも魅了する感動的なシーンが展開されます。
主要登場人物
- 植木等:平凡なサラリーマン。臆病だが、物語が進むにつれて成長していく。
- ハナ肇:未来から来た宇宙人。強引だが、どこか憎めないキャラクター。
- 谷啓:謎の科学者。奇妙な発明品で植木たちを助ける(?)
- 犬塚弘:謎の組織のリーダー。飄々とした掴みどころのない人物。
- クレージーキャッツ:物語の随所に登場し、歌やコントで場を盛り上げる。
特徴と見どころ
クレージーキャッツの魅力
何と言っても、クレージーキャッツのメンバーが放つ、唯一無二のユーモアセンスと、彼らの個性を活かした演技が最大の魅力です。植木等の愛嬌あふれるキャラクター、ハナ肇のパワフルな演技、谷啓のシュールなキャラクター、犬塚弘の飄々とした演技など、それぞれの個性がぶつかり合い、爆笑を誘います。
SFコメディとしての面白さ
当時としては先進的なSF要素を、クレージーキャッツらしいナンセンスなギャグと融合させている点がユニークです。宇宙人やUFOといったSF的な設定を、彼らならではの解釈でユーモラスに描いており、子供から大人まで楽しめるエンターテイメント作品に仕上がっています。
楽曲
本作でも、植木等による名曲の数々が披露されます。彼の伸びやかな歌声と、作品の世界観にマッチした楽曲が、物語に彩りを添えています。特に、クライマックスで歌われる楽曲は、感動的で、映画の余韻を深く残します。
時代背景
1960年代後半の日本は、高度経済成長期を経て、人々の生活が豊かになり、未来への希望に満ち溢れていた時代です。本作には、そんな時代の空気感や、人々の明るい活力が反映されており、観る者に元気と勇気を与えてくれます。
制作の背景
本作は、東宝の「クレージー映画」シリーズの一環として制作されました。クレージーキャッツの人気は映画界にも波及し、彼らを主演とした映画は次々とヒットを記録しました。特に、「奇想天外」というタイトルが示すように、これまでのシリーズとは一味違った、より大胆な発想を取り入れる試みがなされました。
当時の特撮技術は、現在のようなCG技術とは異なり、ミニチュアや合成、特殊効果などを駆使して制作されていました。本作でも、そうした手作りの特撮が、独特のレトロな雰囲気を醸し出しており、それが逆に魅力となっています。宇宙船のデザインや、宇宙人の造形など、当時のSF映画の雰囲気を色濃く感じることができます。
また、脚本には笠原良介、佐々木守らが参加し、クレージーキャッツのメンバーの個性を最大限に引き出すような、ユーモラスでテンポの良い展開が作り上げられました。彼らのアドリブや、現場での息の合ったやり取りも、作品に生かされていると言えるでしょう。
まとめ
『クレージーだよ 奇想天外』は、クレージーキャッツのエンターテイメント性を存分に味わえる、SFコメディの傑作です。彼らならではのナンセンスなギャグ、植木等の歌声、そして予測不能なストーリー展開は、公開から半世紀以上経った今でも色褪せることなく、私たちを笑いと感動の世界へと誘います。
SF的な要素を取り入れつつも、根底には人間ドラマが描かれており、臆病な主人公が勇気を見出す姿は、観る者に勇気を与えてくれます。当時の日本の社会情勢や、特撮技術の限界の中で生まれた、手作りの温かさも感じられる作品です。
クレージーキャッツのファンはもちろん、昔ながらの日本映画の雰囲気を楽しみたい方、そして何よりも笑って元気になりたい方におすすめの一本です。

コメント