バーバレラ:未来的な冒険と官能美の融合
バーバレラ(Barbarella)は、1968年に公開されたフランス・イタリア合作のSFコメディ映画であり、その大胆なビジュアル、官能的なユーモア、そして時代を先駆けた(しかし、現代から見ればある種のノスタルジアを伴う)未来観で、カルト的な人気を博し続けている作品です。原作は、ジャン=クロード・フォレストによる同名のフランスのコミックシリーズです。
作品概要
1968年、監督ロジェ・ヴァディム(Roger Vadim)によって映画化されたバーバレラは、未来の地球を舞台に、美しくも無邪気な宇宙探検家バーバレラ(ジェーン・フォンダ:Jane Fonda)が、愛と平和を失った惑星で、危険な冒険に巻き込まれていく物語です。映画は、その鮮やかな色彩、斬新な衣装デザイン、そして性的解放を謳歌するような大胆な描写で、公開当時、大きな話題を呼びました。
あらすじ
西暦3000年。地球は平和と豊かさに満ちており、人々は「偉大なる穏やかさ(Great Tranquility)」と呼ばれる状態に達し、生殖行為や感情的な葛藤から解放されていました。しかし、この完璧な社会に、ある問題が生じます。それは、悪の科学者フロンテル(David Hemmings:デヴィッド・ヘミングス)が、人類から「欲望」を奪い去る「死の銃(Death Cube)」を開発しようとしていたのです。
この脅威に対抗するため、地球の指導者(Cecil Parker:セシル・パーカー)は、唯一「愛」を知る宇宙探検家、バーバレラに、フロントルを探し出し、その計画を阻止する任務を課します。バーバレラは、未知の惑星へと旅立ち、そこで彼女は様々な奇妙なキャラクターや危険な状況に遭遇します。
彼女は、盗賊団に襲われたり、甘い誘惑を仕掛けてくる天使のような存在に導かれたり、あるいは、危険な機械仕掛けの鳥に追われたりします。そして、これらの経験を通じて、バーバレラは「欲望」という人間の本質的な感情と向き合い、それまで知らなかった「愛」の意味を学んでいくのです。
キャストとキャラクター
ジェーン・フォンダは、この映画の成功の鍵を握る存在であり、彼女の魅力的でエネルギッシュな演技が、バーバレラというキャラクターに命を吹き込みました。彼女の演じるバーバレラは、純真さと大胆さを併せ持ち、観客を魅了します。
その他、フロントル役のデヴィッド・ヘミングス、バーバレラの協力者となるパイロットのダーガン(John Phillip Law:ジョン・フィリップ・ロー)、そして謎めいた存在である「天使」役のアニタ・パンバーグ(Anita Pallenberg)など、個性豊かな俳優陣が、この奇妙で魅力的な世界観を彩っています。
衣装と美術
バーバレラのもう一つの大きな特徴は、その革新的な衣装デザインと未来的な美術です。デザイナーのパコ・ラバンヌ(Paco Rabanne)が手掛けた衣装は、金属、プラスチック、そして光沢のある素材を多用し、当時のファッション界に衝撃を与えました。特に、チェーンメイルのビキニや、光る素材で作られたボディスーツなどは、バーバレラの官能的な魅力を最大限に引き出しています。
宇宙船のデザインや、異星の風景、そして奇妙な装置の数々も、当時のSF映画としては非常に斬新であり、後続の作品に多大な影響を与えました。鮮やかな色彩と、サイケデリックな雰囲気が融合したビジュアルは、今見ても新鮮さを失っていません。
テーマと批評
バーバレラは、公開当時、その大胆な性的描写や、女性の解放をテーマにした内容から、賛否両論を巻き起こしました。しかし、時代が進むにつれて、その挑発的なメッセージや、コメディとしての側面が再評価されるようになりました。
映画は、一見すると軽薄で娯楽的な作品に見えますが、その裏には、人間性、愛、そして欲望といった普遍的なテーマが隠されています。特に、「偉大なる穏やかさ」という、感情や欲望を排除した完璧な社会の描写は、現代社会への風刺としても捉えることができます。
また、バーバレラは、SF映画における女性キャラクターのあり方についても、一つの転換点を示しました。彼女は、単なるヒロインではなく、能動的に行動し、困難に立ち向かう強い女性として描かれています。
後世への影響
バーバレラは、その独特のスタイルと、時代を先駆けたテーマ性から、多くの映画監督やデザイナーに影響を与えています。特に、SF映画におけるビジュアルスタイルや、ファッション、そしてユーモアの取り入れ方において、その功績は大きいと言えるでしょう。
また、現代のファッションやカルチャーにおいても、バーバレラのイメージは、しばしば参照されています。そのグラマラスで退廃的な美学は、今なお多くの人々を魅了し続けています。
まとめ
バーバレラは、1960年代のカウンターカルチャーを象徴するような、大胆で革新的なSF映画です。ジェーン・フォンダの魅力的な演技、パコ・ラバンヌによる斬新な衣装デザイン、そしてロジェ・ヴァディム監督のユニークな世界観が融合し、一度見たら忘れられない強烈な印象を残します。
表面的には、官能的でコミカルな冒険物語ですが、その内には、人間性や愛についての深い洞察も含まれています。公開から数十年を経た今もなお、バーバレラは、そのユニークな魅力で、多くの観客を惹きつけてやまない、まさに時代を超えたカルトムービーと言えるでしょう。この映画は、SF映画の歴史において、その斬新なアプローチと、美学的な豊かさから、特別な一席を占めているのです。

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