フランケンシュタイン死美人の復讐
概要
『フランケンシュタイン死美人の復讐』(原題:The Revenge of Frankenstein)は、1958年に製作されたイギリスのホラー映画です。ハマー・フィルム・プロダクションズが製作し、テレンス・フィッシャーが監督を務めました。この作品は、メアリー・シェリーの小説『フランケンシュタイン』を原作とする、ハマー・フィルムによるフランケンシュタイン・シリーズの第2作目にあたります。主演はピーター・カッシングで、科学者ヴィクター・フランケンシュタイン博士を演じています。
あらすじ
前作『フランケンシュタインの逆襲』(1957年)で、ヴィクター・フランケンシュタイン博士(ピーター・カッシング)は、自らの創造物である怪物を倒し、科学者としての名声と命を失いかけました。しかし、彼は生還し、自身の行いを省みず、さらなる科学的探求に没頭します。
物語は、博士が「フランケンシュタイン博士」ではなく「バロン・チャールズ・ディートリッヒ」と名乗り、慈善病院を設立するところから始まります。しかし、この慈善病院は表向きの顔であり、真の目的は、この病院で研究を続け、人体実験を行うための資金と材料を調達することでした。博士は、事故や病気で亡くなった人々の体を使い、自身の助手であるハンス(ジャック・レスリー)と共に、新しい生命を創造しようと試みます。
博士の新たな創造物は、当初、人間の脳を移植された「頭部」の形でした。しかし、その頭部は、ある日、病院を訪れた新聞記者の調査によって、意外な人物のものであることが発覚します。それは、かつて博士が監禁し、死んだと思われていた人物の頭部でした。この発覚により、博士の秘密の活動が世間に露呈する危機に瀕します。
博士は、この危機を乗り越えるため、そして自身の野望をさらに推し進めるため、より恐ろしい計画を実行に移します。彼は、新たな「死美人」とも呼べる女性の体を作り上げ、そこに自身の協力者の脳を移植しようとします。この過程で、博士は倫理観を完全に失い、人間性を捨て去っていきます。
最終的に、博士の野望は破綻し、彼は自らが作り出した恐怖の犠牲者となります。しかし、その科学への執念は、完全に消え去ることはありませんでした。
キャスト
- ピーター・カッシング(ヴィクター・フランケンシュタイン博士 / バロン・チャールズ・ディートリッヒ)
- ハン・クリスチャン・ブレーク(ハンス)
- マグダ・シュナイダー(ヘルガ)
- アイリーン・バウチャー(エレノア)
- ナイジェル・グリーン(巡査部長)
制作背景とテーマ
ハマー・フィルムとフランケンシュタイン・シリーズ
『フランケンシュタイン死美人の復讐』は、ハマー・フィルム・プロダクションズが製作した、クラシックなモンスター映画のリバイバルを成功させた一連の作品群の一つです。特に、ゴシックホラーの雰囲気と、色彩豊かな映像、そしてゴア表現を巧みに取り入れた作風で知られています。この作品は、前作『フランケンシュタインの逆襲』で確立された、ピーター・カッシング演じる冷酷で知的なフランケンシュタイン博士のキャラクターをさらに掘り下げ、その狂気と野心を強調しています。
科学と倫理
本作の核となるテーマは、科学の進歩と倫理の衝突です。ヴィクター・フランケンシュタイン博士は、純粋な科学的探求心から、生命の創造という禁断の領域に踏み込みますが、その過程で人間性を失い、倫理的な境界線を越えていきます。彼の行動は、科学技術の発展がもたらす倫理的な問題や、人間の傲慢さが招く破滅的な結果を警告しています。
「死美人」の象徴
「死美人」というタイトルは、本作における女性のキャラクターの扱いや、博士が創造しようとする新たな生命体の性質を示唆しています。美しさの中に潜む不気味さや、人工的な生命の脆さが、物語に独特の恐怖感を与えています。
評価と影響
『フランケンシュタイン死美人の復讐』は、公開当時、そのグロテスクな描写とスリリングな展開で観客に衝撃を与えました。批評家からは、前作に劣らない、あるいはそれを凌ぐ出来栄えであると評価されることも多く、ハマー・フィルムのホラー映画の傑作の一つとして数えられています。
ピーター・カッシングの演技は、フランケンシュタイン博士というキャラクターを、単なる悪役ではなく、複雑な人間ドラマの中心に据えることに成功しました。彼の冷徹さと、科学への情熱、そして時折見せる人間的な葛藤が、観客を引きつけました。
この作品は、その後のホラー映画に多大な影響を与え、人体改造や科学倫理といったテーマは、現在でも多くの作品で探求され続けています。
その他の情報
続編
本作の後にも、ハマー・フィルムはフランケンシュタイン・シリーズを複数製作しました。『恐怖の मागणी』(1964年)、『フランケンシュタインの怪獣:ゴルゴ』(1967年)、『吸血鬼ゴケモノが …, monster from hell』(1970年)などが続編として公開されています。
映像と雰囲気
本作は、テレンス・フィッシャー監督の巧みな演出により、ゴシック調の重厚な雰囲気と、鮮烈な色彩が印象的です。特に、手術シーンや怪物の描写には、当時の技術としては先進的な表現が用いられ、視覚的なインパクトを高めています。
原作との関連
メアリー・シェリーの原作『フランケンシュタイン』は、科学の暴走や創造主の責任といったテーマを扱っていましたが、ハマー・フィルム版は、よりエンターテイメント性を重視し、スプラッター要素やスリラー的な展開を強めています。しかし、原作が持つ「科学の倫理」という根源的な問いかけは、本作にも色濃く受け継がれています。
まとめ
『フランケンシュタイン死美人の復讐』は、ハマー・フィルムのホラー映画の黄金期を代表する作品の一つです。ピーター・カッシング演じるフランケンシュタイン博士の狂気と知性、そして科学の進歩がもたらす倫理的なジレンマが、ゴシックホラーの雰囲気の中で見事に描かれています。その衝撃的な描写とスリリングな展開は、今なお多くのファンを魅了し続けています。

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