映画:ミイラ怪人の呪いの詳細・その他
ミイラ怪人の呪い(原題:The Mummy’s Curse)は、1944年にユニバーサル・ピクチャーズによって製作・公開されたホラー映画である。ユニバーサル・モンスターズ・シリーズの一編として、前作ミイラ・ファラオの呪い(1940年)に続く作品であり、シリーズにおけるミイラ・キャラクターの系譜において重要な位置を占めている。監督はレジナルド・ル・ボーが務め、主演にはロン・チェイニー・ジュニアがカリマ役で、イーディス・スコットがアラ役で出演している。
制作背景とシリーズにおける位置づけ
ユニバーサル・モンスターズ・シリーズは、ドラキュラ(1931年)、フランケンシュタイン(1931年)、透明人間(1933年)といった古典的ホラー映画で一世を風靡した。その中でもミイラ映画は、1932年のカール・フロイント監督によるボリス・カーロフ主演の『ミイラ』を皮切りに、数多くの続編やリメイクが製作されている。
ミイラ怪人の呪いは、1940年のミイラ・ファラオの呪いの直接的な続編として位置づけられている。物語は、前作で登場したミイラ・カリマとその復活を企てた悪しき司祭の血筋を引く者たちの因縁を、新たな登場人物たちの視点から描いている。この作品は、ユニバーサル・モンスターズ・シリーズにおけるミイラ映画の様式を確立し、その後の作品にも影響を与えた。
あらすじ
物語は、エジプトから持ち帰られた古代のミイラ「カリマ」の伝説を中心に展開する。考古学者のジョン・ハリソン(ウェストブルック・クロムウェル)は、エジプトの砂漠で発見した古代の墓から、恐るべき力を持つミイラ「カリマ」と、その復活を司る秘宝「アムセスの聖なる炎」を持ち帰る。しかし、カリマは単なるミイラではなく、邪悪な司祭の魂が宿った存在であり、その復活は世界に破滅をもたらす可能性を秘めていた。
ハリソン博士は、カリマの復活を阻止しようとするが、かつてカリマを復活させた司祭の末裔であるアーメド(ジョージ・ズッコ)によって、カリマは不本意ながらも復活させられてしまう。復活したカリマは、その復活の儀式のために犠牲となった人々への復讐を開始する。
一方、ハリソン博士の息子であるハワード・ハリソン(ロン・チェイニー・ジュニア)は、父の遺志を継ぎ、カリマの脅威に立ち向かうことを決意する。彼は、カリマを復活させたアーメドの娘であり、カリマの呪いから逃れようとするアラ(イーディス・スコット)と出会い、協力してカリマを封印しようとする。
ハワードとアラは、カリマの恐るべき力と、その復活に隠された古代の秘密に直面しながら、故郷の村へと逃げ延びる。そこで彼らは、カリマの呪いが村全体を脅かしていることを知る。カリマは、かつて自分を裏切った者たちの血筋を引く者たちを憎み、次々と襲いかかってくる。
最終的に、ハワードとアラは、アーメドの協力を得て、カリマを封印するための儀式を実行する。彼らの努力は実を結び、カリマは再び眠りにつく。しかし、その過程で多くの犠牲者が出てしまい、安堵と悲しみが入り混じる結末を迎える。
登場人物
* カリマ:ロン・チェイニー・ジュニアが演じる、古代エジプトの司祭の魂が宿ったミイラ。強力な超常的な力を持つ。
* アラ:イーディス・スコットが演じる、カリマを復活させた司祭の末裔。カリマの呪いから逃れようとする。
* ハワード・ハリソン:ロン・チェイニー・ジュニアが演じる、考古学者の息子。父の遺志を継ぎ、カリマの脅威に立ち向かう。
* ジョン・ハリソン:ウェストブルック・クロムウェルが演じる、考古学者。カリマをエジプトから持ち帰った人物。
* アーメド:ジョージ・ズッコが演じる、カリマを復活させた司祭の末裔。当初はカリマの復活を幇助するが、後に改心する。
テーマと象徴
ミイラ怪人の呪いは、単なるモンスター映画に留まらず、いくつかの深遠なテーマを含んでいる。
呪いと宿命
物語の中心にあるのは、「呪い」という概念である。カリマは、古代の司祭の呪いによって不滅の存在となり、その呪いは世代を超えて受け継がれていく。登場人物たちは、この宿命的な呪いから逃れようとするが、しばしばそれに囚われてしまう。これは、過去の過ちや因縁が、現代に生きる人々に影響を与え続けるという、普遍的なテーマを象徴している。
科学と迷信
本作では、考古学という科学的な探求が、古代の迷信や超常的な現象と衝突する様が描かれる。ジョン・ハリソン博士は、科学的な好奇心からカリマを発掘するが、その結果、科学では説明できない恐怖に直面することになる。これは、科学万能主義への警鐘とも解釈できる。
復讐と贖罪
カリマは、かつて裏切られたことへの復讐心から蘇る。しかし、その復讐は新たな悲劇を生み出す。一方で、アラやハワードは、カリマの呪いを断ち切り、平和を取り戻そうと奮闘する。彼らの行動は、復讐の連鎖を断ち切り、贖罪へと向かう希望を示唆している。
技術的側面と評価
本作の特殊効果は、当時の技術水準を考慮すると、意欲的なものと言える。ミイラの特殊メイクや、カリマの不気味な動きを表現するための効果は、観客に恐怖感を与えることに成功している。特に、ロン・チェイニー・ジュニアの熱演は、ミイラという非人間的なキャラクターに、ある種の悲哀や苦悩をもたらしている。
しかし、現代の基準から見ると、その演出やストーリー展開には、やや陳腐な部分や、説明不足に感じられる点も指摘される。特に、物語の進行における論理的な飛躍や、登場人物たちの行動原理の不明瞭さは、一部の批評家によって批判されることもある。
それでもなお、ミイラ怪人の呪いは、ユニバーサル・モンスターズ・シリーズのファンにとっては、欠かせない一本であり、ホラー映画史におけるミイラ映画の系譜を語る上で、その意義は大きい。
まとめ
ミイラ怪人の呪いは、古代エジプトの呪われたミイラと、それに立ち向かう人々の戦いを描いた、ユニバーサル・モンスターズ・シリーズの傑作である。科学と迷信、宿命と自由意志といったテーマを探求し、当時の特殊効果を駆使して、観客に強烈な印象を残した。ロン・チェイニー・ジュニアの演じるミイラ・カリマは、シリーズのアイコンの一つとして、今なお多くのファンに愛されている。物語の展開に荒削りな部分もあるものの、ホラー映画の歴史におけるその貢献は揺るぎない。

コメント