キングコングの逆襲
概要
『キングコングの逆襲』(原題:King Kong Escapes)は、1967年に東宝とランキング・プロダクションズが製作した、日米合作の特撮怪獣映画である。巨大類人猿キングコングを主人公とし、その壮絶な活躍と悲劇を描く。日本の怪獣映画の技術と、アメリカのキャラクターであるキングコングの融合が、当時としては革新的な試みであった。
製作背景
本作は、1962年に公開された東宝の『キングコング対ゴジラ』の成功を受けて企画された。同作でキングコングは日本で大ヒットしたが、その権利はアメリカのRKOピクチャーズが保有していた。東宝はRKOとの交渉を経て、キングコングを改めて日本で活躍させる権利を獲得し、本作の製作に踏み切った。監督は『ゴジラ』シリーズなどで知られる本多猪四郎が、特殊技術は『ゴジラ』シリーズで活躍した円谷英二が担当した。
ストーリー
物語の始まり
物語は、国際的な資源開発企業「インターナショナル・マイニング・カンパニー」の社長であるミラー博士が、未知の鉱物「ドクター・X」の採掘のために、太平洋の孤島「ドクロ島」に調査隊を派遣するところから始まる。ドクロ島は、巨大なキングコングの棲息地として知られており、調査隊はその危険を承知の上で島に上陸する。
コングとの遭遇と絆
調査隊のリーダーであるジョーンズ博士は、以前ドクロ島でコンゴウインコを助けた経験から、キングコングに友好的に接しようとする。しかし、ミラー博士の目的はドクター・Xの採掘であり、その過程でコングを捕獲しようと企む。コングは当初、調査隊を警戒するが、ジョーンズ博士の娘であるスーザン博士の優しさに触れ、次第に心を開いていく。コングはスーザン博士を守るために、島の脅威である恐竜や巨大な電気ウナギと戦う。
メカニコングの登場
ミラー博士は、ドクター・Xの採掘に邪魔なコングを捕獲するため、最新技術を駆使してコングそっくりのロボット「メカニコング」を開発する。メカニコングは、コング以上のパワーと知能を持ち、コングに挑戦を挑む。東京でのメカニコングとキングコングの壮絶な死闘は、本作のクライマックスを飾る。
悲劇の結末
東京に連れてこられたコングは、メカニコングとの激闘の末、勝利を収める。しかし、その代償として、スーザン博士を救うために東京タワーに登ったコングは、軍隊の攻撃を受けて墜落死してしまう。コングの悲劇的な最期は、観客に深い感動と哀悼の念を残す。
登場キャラクター・怪獣
キングコング
ドクロ島に棲息する巨大な類人猿。知能が高く、優しさも持ち合わせている。スーザン博士に恋をし、彼女を守るために戦う。本作では、全身を覆う毛皮がよりリアルに表現されている。
メカニコング
ミラー博士が開発した、キングコングを模した巨大ロボット。コングを凌駕するパワーと、学習能力を持つ。最終決戦では、コングと激しい戦いを繰り広げる。
ジョーンズ博士
ドクロ島調査隊のリーダーであり、コングに友好的な姿勢を見せる科学者。
スーザン博士
ジョーンズ博士の娘であり、コングが心を開くきっかけとなる存在。
ミラー博士
「ドクター・X」の採掘を目論む、物語の黒幕。
特撮・美術
本作の特撮は、円谷英二率いる円谷プロダクションが担当した。ミニチュアセットや着ぐるみ、光学合成などを駆使し、当時の最高水準の映像を作り上げている。特に、東京タワーに登るコングのシーンや、メカニコングとの激闘シーンは、迫力満点である。
美術面では、ドクロ島のジャングルや、東京の街並みが精巧に再現されている。メカニコングのデザインは、従来の怪獣とは一線を画す、SF的な要素を取り入れたものとなっている。
音楽
本作の音楽は、伊福部昭が担当した。伊福部昭は『ゴジラ』シリーズでも音楽を担当しており、本作でも壮大なオーケストラサウンドで、映画の世界観を盛り上げている。特に、コングのテーマ曲は、力強くも哀愁漂うメロディーで、観客の心に強く印象付けられる。
評価・影響
『キングコングの逆襲』は、公開当時、日米双方で一定の評価を得た。日本の怪獣映画の技術と、アメリカのキャラクターであるキングコングの組み合わせは、新鮮であり、子供から大人まで幅広い層に楽しまれた。
本作は、後の怪獣映画にも影響を与えた。特に、人間と巨大生物との絆や、科学技術の暴走といったテーマは、その後の作品でも繰り返し描かれることになる。また、メカニコングというロボット怪獣の登場は、怪獣映画のバリエーションを広げる一因となった。
その他
公開情報
『キングコングの逆襲』は、1967年7月22日に日本で公開された。アメリカでは、1967年6月19日に公開されている。
ロケ地
本作のロケ地は、東京各地で行われた。特に、東京タワーでのクライマックスシーンは、多くの観客の記憶に残っている。
トリビア
- 本作は、東宝が製作した最後のキングコング映画である。
- メカニコングのデザインは、当初、より人間に近い姿だったが、怪獣らしくするために現在のデザインに変更された。
- コングの着ぐるみは、当時の技術では非常に重く、着ぐるみを着る俳優は大変な苦労をしたという。
まとめ
『キングコングの逆襲』は、日米合作というユニークな製作体制のもと、キングコングという象徴的なキャラクターを日本独自の怪獣映画の枠組みで描いた意欲作である。迫力ある特撮、魅力的なキャラクター、そして感動的なストーリーは、公開から半世紀以上を経た現在でも多くのファンに愛され続けている。キングコングの悲劇的な結末は、単なる怪獣映画に留まらず、人間のエゴイズムや、自然への畏敬といった普遍的なテーマを観客に問いかける、示唆に富んだ作品と言えるだろう。

コメント