チキ・チキ・バン・バン
『チキ・チキ・バン・バン』(Chitty Chitty Bang Bang)は、1968年に公開されたイギリス・アメリカ合作のミュージカル映画です。イアン・フレミングの児童小説『ふしぎな篷車』を原作としており、その独特な世界観とキャッチーな楽曲で、世代を超えて愛されている名作として知られています。監督はケン・ヒューズ、脚本はケン・ヒューズとリチャード・マッカーシー、ロエル・アールが務めました。主演はディック・ヴァン・ダイクとサリー・アン・ハウズです。
あらすじ
物語は、発明家であるカラム・カーロウ(ディック・ヴァン・ダイク)が、子供たち(ジェマイマとジェレミー)のために、廃車同然の古い自動車を修復するところから始まります。彼はその車に「チキ・チキ・バン・バン」と名付け、改造を施します。すると、この車は驚くべき能力を発揮し、空を飛ぶことができるようになるのです。
ある日、カラム一家はチキ・チキ・バン・バンに乗って、お菓子の国のチャイナ・スワンプへバカンスに出かけます。しかし、そこは恐ろしい独裁者であるゴー・ゴー・ゴードン(ロバート・ヘルプマン)が支配しており、子供たちが禁止されている恐ろしい国でした。ゴー・ゴー・ゴードンは、子供嫌いで、国中の子供たちを捕らえていました。
カラム一家は、子供たちを救い出すために、そしてお菓子の国に平和を取り戻すために、チキ・チキ・バン・バンの不思議な力と知恵を駆使して、ゴー・ゴー・ゴードンとその手下たちに立ち向かいます。道中、彼らは魅力的なキャラクターたちとの出会いを経て、冒険を繰り広げます。
登場人物
- カラム・カーロウ: 才能あふれる発明家で、子供たちに夢を与える父。
- サリー・アン・カーロウ: カラムの妻で、子供たちの母親。
- ジェマイマ・カーロウ: カラムの娘。
- ジェレミー・カーロウ: カラムの息子。
- ゴー・ゴー・ゴードン: お菓子の国の独裁者で、子供嫌い。
- タトル・タトル: カラムの父で、元発明家。
- ロバート・ヘルプマン: ゴー・ゴー・ゴードンの手下。
音楽と楽曲
『チキ・チキ・バン・バン』の魅力の一つは、その音楽です。シャーマン・ブラザーズ(ロバート・シャーマンとリチャード・シャーマン)によって作られた楽曲は、どれも耳に残りやすく、映画の楽しさを一層引き立てます。
代表的な楽曲
- “Chitty Chitty Bang Bang”: 映画のテーマ曲であり、最も有名な楽曲。チキ・チキ・バン・バンという車の名前の由来ともなっている。
- “Toot Sweet”: 恋人たちが歌うロマンチックな楽曲。
- “Me Ol’ Bamboo”: 陽気でリズミカルな楽曲で、子供たちの喜びを表現。
- “Truly Scrumptious”: サリー・アン・ハウズ演じるサリー・アン・カーロウが歌う、優しく甘い楽曲。
- “Doll on a Music Box” (Dick Van Dyke): カラムが人形劇の中で歌う楽曲。
これらの楽曲は、映画のストーリー展開を盛り上げるだけでなく、子供たちの想像力を掻き立てる力を持っています。特に「Chitty Chitty Bang Bang」の歌は、一度聴いたら忘れられないキャッチーなメロディーで、映画の象徴となっています。
撮影と制作
『チキ・チキ・バン・バン』は、イギリスのパインウッド・スタジオを中心に撮影されました。車体デザインは、著名な自動車デザイナーであるフリーマン・ハトルが担当しました。実際の撮影では、3台のチキ・チキ・バン・バンが制作され、それぞれが異なる機能を持っていました。
- 空を飛ぶための車: ワイヤーアクションや特殊効果を駆使して、空を飛ぶシーンを表現。
- 水上を走るための車: 実際の水上走行シーンは、模型やセットで撮影された。
- 陸上走行用の車: 実際の公道やセットで走行シーンを撮影。
映画のセットデザインも非常に凝っており、特に「お菓子の国」のセットは、子供たちの夢を形にしたような、カラフルで幻想的な世界観を創り出しました。ゴー・ゴー・ゴードンの城や、村の風景などが、独特な色彩感覚で描かれています。
評価と影響
『チキ・チキ・バン・バン』は、公開当時、興行的に大成功を収めたわけではありませんでしたが、その独特な世界観、魅力的なキャラクター、そして心に残る楽曲によって、カルト的な人気を獲得しました。子供向けのファンタジー映画として、その後の多くの作品に影響を与えたと言われています。
特に、魔法のような車が登場する点や、悪役から子供たちを守るというテーマは、普遍的な魅力を持っています。また、ディック・ヴァン・ダイクのコミカルな演技と、サリー・アン・ハウズの優雅な演技のバランスも、映画の質を高めています。
現代においても、『チキ・チキ・バン・バン』は、家族で楽しめるクラシック映画として、多くの家庭で愛され続けています。その明るく、希望に満ちたメッセージは、子供たちの想像力を刺激し、大人たちには懐かしさと温かい気持ちを与えてくれます。
現代における再評価
近年、『チキ・チキ・バン・バン』は、その独特なシュールさと、時代を超えたユーモアセンスが再評価されています。単なる子供向け映画としてだけでなく、大人でも楽しめる深みのある作品として、新たなファン層を獲得しています。
映画の持つ、型破りな発想や、困難に立ち向かう勇気といったメッセージは、現代社会においても色褪せることなく、観る者に感動を与え続けます。
まとめ
『チキ・チキ・バン・バン』は、空飛ぶ車、お菓子の国、そして恐ろしい独裁者といった、子供たちの夢を詰め込んだ、夢と冒険のミュージカル映画です。シャーマン・ブラザーズによる珠玉の楽曲、ケン・ヒューズ監督によるユニークな演出、そして魅力的なキャスト陣が織りなす、世代を超えて愛される名作と言えるでしょう。

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