映画:吸血鬼ドラキュラ対狼男(Dracula vs. Frankenstein)詳細・その他
概要
「吸血鬼ドラキュラ対狼男」(原題:Dracula vs. Frankenstein)は、1971年に製作されたアメリカ合衆国のホラー映画である。監督はアール・C・ローレンス。この映画は、古典的なモンスター映画のキャラクターであるドラキュラ伯爵とフランケンシュタインの怪物、そして狼男を一つの物語に集結させた、野心的な作品として知られている。しかし、その実現度や脚本、演技においては、多くの論争と賛否両論を巻き起こした。低予算での製作でありながら、当時のモンスター映画ファンにとっては、これらの人気キャラクターが一堂に会するという点だけでも興味を引く要素であった。
あらすじ
物語は、ドラキュラ伯爵がルーマニアからアメリカに渡り、ロサンゼルスに本拠地を移すところから始まる。彼はロサンゼルスで、イゴールという名の助手と共に、フランケンシュタインの怪物の復活を企む。ドラキュラの目的は、フランケンシュタインの怪物の力を用いて世界を支配することである。
一方、イゴールは、ドラキュラの悪事に協力しながらも、フランケンシュタインの怪物の弱点である銀の弾丸を狼男の毛皮に仕込むという、独自の計画を練っていた。狼男は、ドラキュラの研究所に監禁されており、ドラキュラの支配下にあった。イゴールは狼男をドラキュラの支配から解放し、ドラキュラとフランケンシュタインの怪物に対抗させようと画策する。
ロサンゼルスでは、ドラキュラの暗躍により連続殺人事件が発生し、警察は捜査を開始する。刑事のマックは事件の真相を追ううちに、ドラキュラの存在を知り、恐怖に立ち向かうことになる。物語は、ドラキュラ、フランケンシュタインの怪物、狼男、そして刑事が入り乱れ、混沌とした展開を繰り広げる。
キャスト
- レックス・バレル:ドラキュラ伯爵
- ボリス・カーロフ:フランケンシュタインの怪物(声のみ)
- ジョン・サイモン:狼男
- ジャン・セバーグ:アネット(フランケンシュタインの怪物の製作者の娘)
- ロン・チェイニー・ジュニア:イゴール
- ジェームズ・ドナヒュー:刑事マック
特にボリス・カーロフは、フランケンシュタインの怪物の役を演じたことで有名だが、本作では声のみの出演となっている。ロン・チェイニー・ジュニアは、狼男の役を演じた経験も持ち、本作ではイゴールを演じている。
製作背景と評価
「吸血鬼ドラキュラ対狼男」は、ユナイテッド・アーティストが1970年代初頭に、古典的なユニバーサル・モンスターを再活用しようとした一連の映画の一部として製作された。製作費は低額であったため、特殊効果や美術には限界があった。脚本は陳腐であり、演出も単調であったと評されることが多い。
批評家からの評価は厳しく、興行成績も芳しくなかった。しかし、カルト映画としての人気は根強く、モンスター映画のコレクターやマニアの間では一定の評価を得ている。現代から見れば、 crude(洗練されていない)な部分も多いが、その時代の雰囲気や、有名なモンスターを集結させた野心は評価に値すると言える。
特に、ドラキュラ、フランケンシュタインの怪物、狼男といった象徴的なキャラクターが同じ画面に登場するという点は、観客の興味を引く要素であった。しかし、それらのキャラクターが織り成す物語は、期待に応えるものではなかったという意見が一般的である。脚本の再構成や演出の向上があれば、より傑作に近づけた可能性も否定できない。
その他・トリビア
- ボリス・カーロフは、フランケンシュタインの怪物の役を演じた最後の映画となった。しかし、台詞はなく、怪物の声を担当するのみであった。
- フランケンシュタインの怪物が登場するシーンは、過去の映画の映像を流用したという噂もある。
- 映画のタイトルは当初、「フランケンシュタイン対ドラキュラ」であったが、法的な理由で「吸血鬼ドラキュラ対狼男」に変更された。
- 狼男の変身シーンは、特撮が乏しい時代の典型であり、現在の基準から見れば単純なものである。
- 一部のファンからは、映画の意外性や個性的なキャラクターの組み合わせが楽しまれている。
まとめ
「吸血鬼ドラキュラ対狼男」は、名だたるモンスターキャラクターを一堂に集結させた野心的な作品であるが、低予算、粗雑な脚本、そして平凡な演出により、批評的、商業的には成功しなかった映画である。しかし、カルト映画としての魅力も一部には存在し、古典的なモンスター映画のファンには一定の興味を引く作品と言えるだろう。現代から見れば稚拙な部分も多いが、その時代のホラー映画の一端を垣間見る機会を提供してくれる作品でもある。

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