続・猿の惑星

SF映画情報

続・猿の惑星 (Beneath the Planet of the Apes)

概要

『続・猿の惑星』は、1970年に公開されたアメリカのSF映画であり、『猿の惑星』(1968年)の続編です。監督はテッド・ポストが務めました。前作で描かれた猿の支配する惑星に、新たな宇宙飛行士が降り立ち、さらに衝撃的な真実と対峙することになります。前作の衝撃を引き継ぎつつ、よりダークで哲学的なテーマを掘り下げた作品として、SF映画史において重要な位置を占めています。

あらすじ

物語は、前作の主人公テイラー(チャールトン・ヘストン)が謎の消失を遂げた後、宇宙船「イーグル号」の乗組員であるジョン・ブレント(ジェームズ・フランシス)が、テイラーを探すために猿の惑星に降り立ったところから始まります。ブレントは、テイラーが残した痕跡を辿り、猿に支配された世界を目の当たりにします。彼は、テイラーが地下に潜伏していることを知り、彼を救出するために深部へと進んでいきます。

地下世界に到達したブレントは、そこで驚くべき光景を目にします。そこは、猿の文明から追放された、テレパシー能力を持つミュータント(変異体)猿たちが築き上げた地下都市でした。彼らは、かつて人類が放射能攻撃によって滅亡寸前まで追い込まれた際の核兵器の残骸を崇拝し、その力によって精神世界を支配していました。ブレントは、このミュータント猿たちとの遭遇を通じて、猿の惑星の隠された歴史と、人類の過去の過ちを知ることになります。

一方、テイラーは、ミュータント猿たちによって捕らえられ、彼らの地下都市の深奥に幽閉されていました。彼は、ミュータント猿たちのテレパシー能力によって精神を蝕まれそうになりますが、その中でも人間としての尊厳を保とうとします。ブレントは、テイラーの存在を知り、彼を救い出そうと奮闘しますが、ミュータント猿たちの強力なテレパシー能力と、彼らが仕掛けた数々の罠に苦しめられます。

物語のクライマックスでは、ブレントとテイラーが協力してミュータント猿たちに立ち向かいます。しかし、彼らの前に立ちはだかるのは、想像を絶する強大な力と、人類滅亡の危機を招いた過去の遺物でした。最終的に、両者の戦いは、猿の惑星全体、そして人類の未来をも左右する、破滅的な結末へと突き進んでいきます。

登場人物

ジョン・ブレント

「イーグル号」の宇宙飛行士であり、テイラーの捜索のために猿の惑星に降り立った人物。勇敢で行動力がありますが、猿の惑星の過酷な現実に直面し、次第に追い詰められていきます。

テイラー

前作の主人公。猿の惑星で消息を絶ち、地下世界でミュータント猿たちに囚われています。人類の代表として、猿の惑星の真実と向き合うことになります。

ゼイラ

前作にも登場した、心優しいチンパンジーの女性。ブレントに協力し、猿の惑星の秘密を明かします。

コーネリアス

ゼイラの夫であり、猿の惑星の歴史を研究するチンパンジー。ブレントに協力し、過去の出来事を語ります。

ジーラ

ゼイラとコーネリアスの親友であり、猿の惑星の科学者。ブレントの窮地を救おうとします。

ミュータント猿

地下世界に住む、テレパシー能力を持つ猿たち。彼らは、人類が遺した核兵器を崇拝し、その力によって精神世界を支配しています。彼らのリーダーは、強大なテレパシー能力を持つ「シャイロック」です。

制作背景

『続・猿の惑星』は、前作の予想外の大ヒットを受けて制作されました。前作の衝撃的なラストシーンの続きを描くという使命を帯びていたため、制作陣はより壮大で、さらに哲学的なテーマを盛り込むことを目指しました。

本作では、人類の自己破壊的な側面や、核戦争の恐怖といった、当時の社会情勢を反映したテーマが色濃く描かれています。特に、地下世界に住むミュータント猿たちの設定は、人類の過ちによって変異してしまった存在として、人間という種そのものへの問いかけを含んでいました。

また、前作のテイラー役のチャールトン・ヘストンが、本作では限定的な出演となり、新たにジェームズ・フランシスが主人公ブレントを演じました。これにより、物語は新たな視点と展開を迎えることになりました。

SFX(特殊効果)においては、猿のメイクアップ技術がさらに進化し、よりリアルな猿のキャラクターたちが画面を彩りました。また、荒涼とした猿の惑星の風景や、地下世界の異様な雰囲気も、視覚的なインパクトを高める要素となりました。

テーマと解釈

『続・猿の惑星』は、前作よりもさらに複雑で、多層的なテーマを扱っています。

  • 人類の自己破壊性:本作で描かれる核戦争の遺産や、ミュータント猿たちの存在は、人類が自らの手で滅亡を招く可能性を示唆しています。過去の過ちから学ぶことの重要性が、暗に説かれています。
  • 信仰と狂信:ミュータント猿たちが核兵器を神格化し、それに盲目的に従う姿は、宗教的な狂信や、権力への盲従といった人間の愚かさを浮き彫りにします。
  • 知性と暴力:猿の知性が進歩した世界で、それでもなお暴力や支配が横行する様は、知性の進化と道徳観の発展が必ずしも比例しないことを示唆します。
  • 希望の喪失:前作のテイラーが、絶望の中で人間としての尊厳を保とうとしたのに対し、本作のブレントは、さらに過酷な状況に置かれ、最終的には破滅へと突き進みます。物語全体に漂う虚無感や、希望の喪失が、本作のダークな魅力を際立たせています。

本作のエンディングは、SF映画史上でも最も衝撃的で、議論を呼ぶものの一つとして知られています。それは、単なるエンターテイメントに留まらず、観客に深い問いを投げかける、哲学的な作品と言えるでしょう。

映画史における位置づけ

『続・猿の惑星』は、SF映画のジャンルにおいて、続編の成功例として、また、よりダークで実験的なテーマを追求した作品として、重要な評価を得ています。

前作のSF的な冒険活劇の側面を継承しつつ、本作はさらに社会風刺や哲学的な思索を深めました。特に、人類の未来に対する警鐘や、文明の崩壊といったテーマは、公開当時から現在に至るまで、多くの観客や批評家に影響を与えています。

また、本作で描かれた地下世界の異様な雰囲気や、ミュータント猿たちの造型は、その後のSF作品にインスピレーションを与えたとも言われています。前作の成功によって確立された『猿の惑星』シリーズの世界観は、本作によってさらに広がり、その後のシリーズ作品の基盤となりました。

『続・猿の惑星』は、単なるエンターテイメント作品に留まらず、人間の本質や文明のあり方について、観客に深く考えさせる力を持った、時代を超えて語り継がれるべきSF映画の金字塔と言えるでしょう。

まとめ

『続・猿の惑星』は、前作の衝撃をさらに深化させ、よりダークで哲学的な世界観を展開したSF映画の傑作です。人類の自己破壊性、信仰の狂信、そして希望の喪失といったテーマを扱い、観客に深い問いを投げかけます。ミュータント猿という新たな存在の登場や、衝撃的なエンディングは、SF映画史に大きな足跡を残しました。前作とは異なる、よりシリアスで内省的なトーンを持つ本作は、SFファンならずとも一度は観るべき作品です。

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