ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦!南海の大怪獣
作品概要
『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦!南海の大怪獣』(げぞら・がにめ・かめーば けっせん!なんかいのだいかいじゅう)は、1970年(昭和45年)12月19日に東宝によって配給・公開された特撮怪獣映画である。監督は本多猪四郎、特技監督は有川貞昌が務めた。東宝チャンピオンまつりとして公開された作品であり、前年に公開された『緯度0大戦争』に続く、子供向け怪獣映画の制作であった。
本作は、南太平洋の架空の島「ヨル島」を舞台に、科学者たちが開発した人工太陽が原因で、古代の巨大生物たちが蘇り、日本本土に上陸するというストーリーである。3匹の怪獣、ゲゾラ、ガニメ、カメーバがそれぞれ個別に登場し、最終的に日本を襲うという、怪獣映画としては異色の構成となっている。
あらすじ
ヨル島での異変
太平洋の孤島、ヨル島では、太陽光発電を目的とした人工太陽の開発実験が行われていた。その実験の最中、大規模なエネルギー放出が発生し、島に異変が起こる。島に生息する古代生物たちが、このエネルギーの影響を受けて巨大化・凶暴化し始めたのだ。
古代生物の覚醒
まず、巨大な触手を持つ恐竜のような怪獣「ゲゾラ」が姿を現す。ゲゾラは、その強力な触手で島を破壊し、生物たちを襲い始める。続いて、甲羅に覆われた凶暴なカニの怪獣「ガニメ」が、ゲゾラに襲いかかる。さらに、巨大なカメの怪獣「カメーバ」も出現し、島は未曽有の混乱に陥る。
怪獣たちの日本上陸
これらの巨大生物たちは、人工太陽のエネルギーによってさらに力を増し、島から離れ、日本本土へと向かう。ゲゾラは水陸両用で、東京湾に上陸。ガニメは陸上を闊歩し、都市を蹂躙する。カメーバもまた、その巨体で海岸線に上陸し、甚大な被害をもたらす。
怪獣との決戦
日本政府と自衛隊は、これら3体の脅威に立ち向かうべく、総力を挙げて迎撃作戦を展開する。科学者たちは、怪獣たちの弱点を探るべく研究を進める。ゲゾラは冷凍液に弱く、ガニメは電撃に、カメーバは特殊な薬品に弱いことが判明する。
激しい戦いの末、自衛隊はゲゾラに冷凍攻撃を仕掛け、海上で凍結させて撃破する。ガニメは、東京タワーに電気を流すことで感電死させる。カメーバは、特殊な爆破装置を用いて撃破される。かくして、3体の巨大怪獣は滅ぼされ、日本に平和が戻る。
主要登場怪獣
ゲゾラ
ヨル島に生息していた原始的な爬虫類が、人工太陽のエネルギーによって巨大化した姿。全身が硬い鱗に覆われ、背中には鋭いトゲを持つ。巨大な触手を自在に操り、対象を締め上げたり、投げ飛ばしたりする。水陸両用で、水中でも俊敏に活動する。
ガニメ
ヨル島に生息していた巨大なカニが、人工太陽のエネルギーによって凶暴化した姿。全身が硬い甲羅に覆われ、強力なハサミで敵を攻撃する。俊敏な動きで陸上を這い回り、その巨体で建物を破壊する。
カメーバ
ヨル島に生息していた古代の巨大カメが、人工太陽のエネルギーによって凶暴化した姿。巨大な甲羅を持ち、その巨体で海岸線を破壊する。強力な顎と首の力で敵を襲う。
制作背景と特徴
本作は、子供向けのエンターテイメント作品として制作された。そのため、ストーリーは比較的単純明快であり、怪獣たちのデザインやアクションも、子供たちが楽しめるように工夫されている。3体の怪獣がそれぞれ独立して登場し、それぞれ異なる弱点を持つという構成は、子供たちの注意を引きつけ、飽きさせないための配慮と言える。
また、本作では、東宝特撮映画の伝統であるミニチュアセットでの都市破壊シーンや、怪獣たちの着ぐるみによる迫力あるアクションが健在である。特に、ゲゾラ、ガニメ、カメーバの3体は、それぞれ個性的なデザインと能力を持っており、子供たちの想像力を掻き立てる存在となっている。
監督の本多猪四郎は、怪獣映画の演出において豊富な経験を持っており、本作でもその手腕を発揮している。特技監督の有川貞昌も、ミニチュアワークや特撮効果において高い技術を持ち、怪獣たちの迫力を最大限に引き出している。
その他
キャスト
主要キャストには、土屋嘉男、田崎潤、藤山浩二、中山麻里などが名を連ねている。怪獣の声は、大友純が担当している。
音楽
本作の音楽は、伊福部昭が担当した。伊福部昭は、『ゴジラ』シリーズをはじめとする多くの東宝特撮映画で音楽を手がけており、本作でも怪獣たちの雄大さと恐怖を表現する壮大な楽曲を提供している。
公開
本作は、1970年(昭和45年)12月19日に東宝系で封切られた。同時上映は『怪獣大戦争』、『学園戦線』、『男一匹ガキ大将』、『俺たちの勲章』、『決断』、『海軍横須賀基地』、『激動の青春』、『大悪党』、『落葉樹』、『社長もや sobie 』(sic)。
まとめ
『ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦!南海の大怪獣』は、子供たちのための怪獣映画として、その役割を十分に果たした作品と言える。3体の個性的な怪獣、迫力ある特撮、そして子供たちが感情移入しやすいストーリー展開は、多くの子供たちに夢と興奮を与えた。単なる怪獣映画に留まらず、科学技術の進歩がもたらす可能性と危険性、そして自然の脅威といったテーマも subtly に織り交ぜられており、大人も楽しめる要素を含んでいる。東宝特撮黄金期の一端を担う、魅力的な作品である。


コメント