THXー1138

SF映画情報

THX 1138

概要

THX 1138は、1971年に公開されたジョージ・ルーカス監督の長編デビュー作です。当初は1967年に発表された同名の短編映画を元に製作されました。この作品は、近未来のディストピア社会を舞台に、主人公THX 1138が管理された管理社会から脱出しようとする姿を描いています。ルーカス監督特有のSF的世界観と、社会風刺が融合した作品として、後のSF映画に大きな影響を与えました。

あらすじ

物語の舞台は、地下に広がる徹底的に管理された都市です。住民たちは、感情を抑圧する薬物「セダティブ」を定期的に投与され、定められた職業に就き、常に監視下に置かれています。主人公である「THX 1138」は、この管理社会の一員として、ロボット工場の管理職として働いています。

ある日、THX 1138は、共犯者である「LU-37」によって、セダティブの投与を止められてしまいます。セダティブの効果が切れると、THX 1138は抑圧されていた感情、特に恋人である「LUH-3417」への愛情を強く意識するようになります。しかし、この都市では恋愛感情や個人の自由は禁止されており、THX 1138とLUH-3417の関係は「不正」とみなされます。

LUH-3417は、THX 1138のセダティブ投与を止めたことで、二人とも逮捕されてしまいます。THX 1138は、彼女を救い出すために、そしてこの管理社会から脱出するために、仲間の囚人である「SEN-5」と共に、困難な逃亡劇を繰り広げます。彼らは、監視網をかいくぐり、地下都市の迷宮のような通路をさまよい、最終的には都市の外、未知の世界へと向かいます。

主要登場人物

THX 1138

ロバート・デュヴァルが演じる主人公。管理社会で与えられた番号を名乗る。当初は社会のシステムに疑問を持たないが、セダティブの投与を止められたことで、感情を取り戻し、自由を求めるようになる。

LUH-3417

マギー・マクレーが演じるTHX 1138の恋人。彼女もまた、THX 1138と共に管理社会の抑圧から逃れようとする。

SEN-5

ドナルド・モファットが演じる囚人。THX 1138の逃亡を手助けする。皮肉屋だが、どこか人間味のあるキャラクター。

OWAN

イアン・ウルフが演じる、THX 1138の上司であり、管理社会における権力者の一人。

Chứng (チャック) マーシャル・イーフレイミーが演じる、AIによる統制システムの声。 制作背景とテーマ

THX 1138は、ルーカス監督が南カリフォルニア大学で製作した同名の短編映画が評価されたことで、長編映画化の機会を得ました。製作はフランシス・フォード・コッポラが担当しました。

この作品の根底には、当時の社会情勢、特にベトナム戦争やカウンターカルチャーへの反発といったものが反映されていると言われています。管理された社会、感情の抑圧、個人の自由の喪失といったテーマは、現代社会にも通じる普遍的な問いかけを投げかけています。

ルーカス監督は、この作品で「テクノロジーの進歩が人間性を脅かす可能性」や「社会システムによる個人の抑圧」といったテーマを、独特のビジュアルと音響効果で描きました。特に、地下都市の無機質で閉鎖的な空間描写や、サイレンや機械音を多用したサウンドデザインは、作品の世界観を強く印象づけています。

批評と評価

公開当時、THX 1138は、その斬新な映像表現と難解なテーマから、賛否両論を巻き起こしました。商業的には大ヒットとは言えませんでしたが、SF映画ファンや批評家からは、その芸術性と先駆的な試みが評価されました。

後のSF映画、特にブレードランナーなどのディストピアSF作品に与えた影響は計り知れません。ルーカス監督自身も、この作品で培った映像表現や世界観構築のノウハウは、後のスター・ウォーズシリーズへと繋がっていきました。

再編集版について

2004年には、ルーカス監督自身がデジタル技術を用いて再編集し、一部のシーンを追加・変更した「ディレクターズ・カット」が公開されました。このバージョンでは、CGによる背景の追加や、一部のキャラクターのセリフの変更などが行われ、より現代的な視点での作品となっています。しかし、オリジナル版とは異なる解釈が加えられていることから、賛否両論があります。

まとめ

THX 1138は、ジョージ・ルーカス監督の初期の傑作であり、 SF映画の歴史において重要な位置を占める作品です。感情を抑圧された管理社会における個人の苦悩と、そこからの解放を求める姿を、衝撃的な映像と音響で描き出しています。その後の多くのSF作品に影響を与えただけでなく、現代社会においても、テクノロジーと人間性の関係性について深く考えさせられる作品と言えるでしょう。

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