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映画：ゴジラ対ヘドラ：詳細・その他
概要
『ゴジラ対ヘドラ』は、1971年（昭和46年）12月18日に公開された、東宝製作の怪獣映画です。ゴジラシリーズの第11作目にあたります。本作は、当時の公害問題や公害反対運動を背景に、環境破壊が生み出した新たな怪獣ヘドラとゴジラが激突するという、社会派的なテーマを色濃く反映した異色作として知られています。監督は坂野義雄、特技監督は有川貞昌が務めました。
あらすじ
物語は、東シナ海に浮かぶ小さな島で発生した奇妙な現象から始まります。海底に堆積した汚泥が、突如として奇妙な生命体「ヘドラ」として出現します。ヘドラは、人間の活動によって排出された産業廃棄物や汚染物質を吸収し、巨大化・凶暴化していきます。
一方、ゴジラは、ヘドラの出現によって引き起こされる環境汚染と、それによる生態系の破壊を止めるべく、再び地上に姿を現します。ヘドラは、体から放出される猛毒の粉や、液体状の体液を武器に、人間とゴジラ双方に襲いかかります。
物語の主人公である矢野徹（演：山内雅人）は、ヘドラの出現と、それが父（演：田崎潤）の営む漁業に壊滅的な打撃を与える様子を目の当たりにします。徹は、海洋学者の父と共にヘドラの弱点を探り、ゴジラと協力してヘドラを倒すことを決意します。
ゴジラとヘドラの壮絶な戦いは、陸上だけでなく、海上、そして空中へと舞台を移します。ヘドラは、その液体状の体質ゆえに、ゴジラの放射熱線をも無効化する場面も見られます。しかし、ゴジラは、ヘドラを弱らせるための電極を設置し、強力な電流を流し込むという大胆な作戦に出ます。最終的に、ゴジラは凍結したヘドラの巨体を粉砕し、勝利を収めます。
主要登場人物・怪獣
ゴジラ
本作のゴジラは、地球の平和と生態系を守る存在として描かれます。ヘドラの公害によって引き起こされる環境破壊に怒り、立ち向かいます。従来のゴジラが破壊の象徴であったのに対し、本作では、ある種の「守護者」としての側面も強調されています。
ヘドラ
「公害怪獣」と呼ばれるヘドラは、本作の最大の特徴です。産業廃棄物と汚染物質の集合体であり、その存在自体が現代社会の負の側面を象徴しています。飛行能力を持ち、体から猛毒の粉を撒き散らすなど、これまでの怪獣にはないユニークな攻撃方法を持っています。液体状の体質は、ゴジラの攻撃を回避する場面もあり、その強敵ぶりは際立っています。
矢野徹
主人公。父と共にヘドラの脅威に立ち向かい、ヘドラの弱点を探るために奔走します。父である海洋学者の矢野博士との親子愛も描かれ、物語に人間ドラマの側面をもたらしています。
矢野博士
徹の父。海洋学者であり、ヘドラの生態と弱点にいち早く気づく人物です。ゴジラとヘドラの戦いを科学的な視点から分析し、最終的な決着に繋がる提案をします。
製作背景とテーマ
『ゴジラ対ヘドラ』は、1960年代後半から1970年代にかけて深刻化した日本の公害問題への関心の高まりを背景に製作されました。ヘドラは、まさに公害の具現化であり、その登場は当時の社会情勢を色濃く反映しています。
監督の坂野義雄は、本作に環境問題への警鐘を鳴らすという強いメッセージを込めています。ゴジラがヘドラと戦う姿は、自然が公害によって脅かされた時に反撃する様にも見え、観客に環境保護の重要性を訴えかけています。
また、本作は、ゴジラシリーズの中でも特に実験的で、サイケデリックな映像表現や、「かえせ！太陽を」といった主題歌など、当時の若者文化やカウンターカルチャーの影響も受けている点が特徴的です。ゴジラが空中を飛翔するシーンは、その象徴的な例と言えるでしょう。
特撮と音楽
特撮
本作の特撮は、有川貞昌特技監督のもと、当時の技術を駆使して制作されました。ヘドラのユニークな攻撃方法や、ゴジラとの激しい戦闘シーンは、迫力満点に描かれています。特に、ヘドラが液化してゴジラに襲いかかるシーンや、ゴジラがヘドラを飛行機で引きずり回すシーンなどは、当時としては画期的な映像表現でした。
音楽
本作の音楽は、黛敏郎が担当しました。ヘドラの不気味さを表現する楽曲や、ゴジラとヘドラの戦闘シーンを盛り上げる音楽は、映画の雰囲気を一層引き立てています。また、主題歌である「かえせ！太陽を」（作詞：阿久悠、作曲：鈴木邦彦、歌：富田伊保子、ヒデとロザンナ）は、公害反対のメッセージが込められており、映画のテーマ性を象徴する楽曲として、現在でも語り継がれています。
評価と影響
『ゴジラ対ヘドラ』は、公開当時、興行収入で前作を上回るヒットを記録しました。しかし、その斬新なテーマや映像表現、そしてゴジラが人間を殺害するシーンなど、従来のゴジラ映画とは一線を画す作風から、賛否両論を巻き起こしました。
一方で、本作の持つ環境問題へのメッセージ性や、革新的な映像表現は、後続の怪獣映画に多大な影響を与えました。特に、ヘドラというキャラクターは、怪獣デザインの幅を広げるきっかけとなり、社会的なテーマを内包した怪獣映画の可能性を示しました。
現在では、その異色作としての魅力が再評価されており、ゴジラシリーズの中でもカルト的な人気を誇る作品となっています。
まとめ
『ゴジラ対ヘドラ』は、単なる怪獣映画に留まらず、現代社会が抱える環境問題に鋭く切り込んだ、時代を象徴する作品です。ヘドラという強烈なキャラクター、ゴジラとヘドラの激しい攻防、そして作品に込められたメッセージは、公開から半世紀以上経った今でも多くの人々に衝撃と感動を与えています。怪獣映画の歴史において、本作が果たした革新的な役割は計り知れません。
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