呪いの館 血を吸う眼
概要
『呪いの館 血を吸う眼』(のろいのかん けつをすうめ)は、1971年に公開された日本のホラー映画です。大映(現:角川大映)が製作し、監督は『妖怪大戦争』などで知られる黒田義之が務めました。怪奇』シリーズの一作品として位置づけられることもありますが、独立した物語であり、前作『血を吸う人形』、『血を吸う薔薇』に続く『血を吸う』シリーズの第3作目にあたります。この作品は、吸血鬼の伝説を基盤としながらも、日本ならではの怪談的な要素や、日本家屋の陰鬱な雰囲気を巧みに取り入れた、独特なホラーテイストを確立しています。昭和の怪奇映画の遺産として、今なお熱狂的なファンを惹きつけています。
あらすじ
物語は、山奥に佇む古びた日本家屋から始まります。この館は、代々吸血鬼の血を引く一族が住み、血を糧として生きてきました。ある日、若き美術商である青年・健一(演:高橋幸治)が、骨董品を求めてこの館を訪れます。館の主人である老婆・お富(演:岸田今日子)は、健一に不気味な歓迎を示します。館に滞在するうちに、健一は館の秘密に徐々に気付き始めます。夜には不可解な出来事が頻発し、館の奥に住む謎の美女・千鶴(演:藤原釜子)の存在を知ります。千鶴は、健一の血に魅せられ、彼を吸血鬼の世界へ誘い込もうとします。健一は、自らの身を守るため、そして千鶴を救うため、館の闇に立ち向かうことになります。館に秘められた恐ろしい真実と、吸血鬼の悲しい宿命が、次第に明かされていきます。
スタッフ・キャスト
監督
黒田義之
脚本
吉田陽一
音楽
渡辺宙明
出演
- 高橋幸治 (健一)
- 岸田今日子 (お富)
- 藤原釜子 (千鶴)
- 岸田森 (宗円)
- 小川節子 (お咲)
作品の魅力・評価
独特な世界観と映像美
本作の最大の魅力は、日本の伝統的な美意識と西洋のゴシックホラーが融合した独特な世界観にあります。暗く、陰鬱な雰囲気に満ちた館のセットや、着物を纏った吸血鬼の姿は、視覚的に強烈な印象を与えます。黒田監督の演出は、単なる恐怖だけでなく、妖艶さや哀愁をも感じさせ、観客を異世界へ引き込みます。
演技陣の怪演
岸田今日子の演じるお富は、威厳と狂気を併せ持つ存在として、強烈なインパクトを放っています。藤原釜子の演じる千鶴は、美しさと悲劇性を兼ね備え、観客の同情を誘います。高橋幸治も、徐々に闇に染まっていく青年を熱演し、物語の推進力となっています。脇を固める岸田森や小川節子ら個性派俳優たちの演技も、作品の深みを増しています。
テーマ性
本作は、単なる怪奇趣味に留まらず、血に縛られた一族の悲劇や、人間の根源的な欲望、そして抗いがたい運命といったテーマを内包しています。吸血鬼というモチーフを通して、人間の業や孤独が描かれています。
その他
『血を吸う』シリーズ
本作は、1970年の『血を吸う人形』、1971年の『血を吸う薔薇』に続くシリーズの第3作です。各作品は独立した物語であり、登場人物や設定に直接の繋がりはありませんが、吸血鬼というテーマを共有し、独特な世界観を展開しています。特に本作は、日本の怪談との融合が進み、シリーズの中でも異色の存在となっています。
リメイク・影響
本作は、直接のリメイクはありませんが、その独自の世界観と映像は、後年の日本のホラー映画に影響を与えたと考えられます。特に和製ゴシックホラーの先駆として、評価が高まっています。
現代における評価
公開当時は興行的には成功とは言えませんでしたが、時を経るごとにカルト的人気を博し、現在では昭和ホラーの名作として認識されています。その芸術的な側面と、観念的な恐怖は、今の観客にも新鮮な感動を与えるでしょう。
まとめ
『呪いの館 血を吸う眼』は、単なるホラー映画の枠を超え、日本の美学と怪談、そして吸血鬼の伝説が見事に融合した珠玉の一本です。独特な世界観、印象的な映像、そして俳優たちの怪演は、観る者を魅了し続けます。昭和ホラーファンならず、少し変わったホラーを求めている方にぜひお勧めしたい作品です。

コメント