悪魔のエイリアン
作品概要
『悪魔のエイリアン』(原題: Alien Resurrection)は、1997年に公開されたアメリカ合衆国のSFホラー映画であり、『エイリアン』シリーズの第4作目にあたります。監督はジャン=ピエール・ジュネが務め、シガーニー・ウィーバーが主演を務めるリプリー役を再び演じています。前作『エイリアン3』でリプリーは死亡しましたが、本作ではクローンとして蘇り、新たな脅威に立ち向かうことになります。
あらすじ
物語は、西暦2379年、荒廃した地球から遠く離れた宇宙ステーション「アウレガ214」を舞台に始まります。前作の出来事から200年後、人類はリプリーのクローンを複数作成し、その遺伝子情報からエイリアンを誕生させるという恐るべき研究を行っていました。リプリーのクローン(リプリー8)は、エイリアンと人間を融合させた「ニュー・ブランド」と呼ばれる新たなエイリアンを宿した状態で蘇生されます。
一方、賞金稼ぎの集団が、ブラックマーケットで人間を密売するためにアウレガ214に潜入します。彼らは、ステーションがエイリアンによって乗っ取られ、乗組員が惨殺されている状況に遭遇。リプリー8は、彼らと共にステーションからの脱出を目指すことになります。しかし、エイリアンは驚異的な速度で増殖・進化し、リプリー8自身もまた、エイリアンとしての本能に目覚め始めていました。
ステーションが崩壊の危機に瀕する中、リプリー8と賞金稼ぎたちは、エイリアンたちの捕食から逃れ、地球への帰還を目指して必死のサバイバルを繰り広げます。リプリー8は、自身のクローンとしての存在意義と、エイリアンとしての本能との間で葛藤しながら、究極の選択を迫られます。
登場人物
エレン・リプリー (シガーニー・ウィーバー)
本作では、クローンとして蘇ったリプリーが登場します。200年後の時代において、彼女は人間とエイリアンの遺伝子を併せ持つ存在として描かれています。過去の記憶を持ちながらも、エイリアンとしての本能が芽生え始めており、複雑な葛藤を抱えています。
ディストリクト9 (マイケル・ウィーレン)
賞金稼ぎの一人で、当初はリプリー8を捕獲しようとしますが、後に協力関係となります。冷静沈着で、状況判断に長けた人物です。
ジョナサン・プライス (レランド・ライアン)
「ウルブ」という名の宇宙船を率いる賞金稼ぎのリーダー。冷酷非情な一面を持っています。
クリストファー・エヴァンス (カール・ルーウェン)
ステーションの科学者。リプリーのクローン作成に関わっています。
アンドロイド「アン」 (レランド・ライアン)
ステーションの管理・警備を行うアンドロイド。独特なキャラクターであり、物語の展開に影響を与えます。
クリーチャー「エイリアン」
本作に登場するエイリアンは、これまでのシリーズとは異なり、より多様な形態と進化を遂げています。特に、人間とエイリアンが融合した「ニュー・ブランド」は、その異形さと凶暴性で観客に強烈な印象を与えます。
- ニュー・ブランド: 人間とエイリアンの遺伝子が融合して生まれた、全く新しいタイプのエイリアン。人間的な特徴とエイリアン特有の凶暴性を併せ持ち、過去のエイリアンとは異なる進化を遂げています。
- クイーン・エイリアン: 本作でも登場し、エイリアンの増殖の中心となります。
音楽
本作の音楽は、ドン・デイヴィスが担当しています。緊張感あふれるスコアは、映画のSFホラーとしての雰囲気を盛り上げています。
公開と評価
『悪魔のエイリアン』は、その斬新な設定とグロテスクな描写で賛否両論を巻き起こしました。従来の『エイリアン』シリーズとは一線を画す、ダークでユニークな世界観は、監督ジャン=ピエール・ジュネの個性が強く反映されています。商業的には、前作ほどの成功は収められませんでしたが、カルト的な人気を博しています。
その他
本作は、シリーズの中でも特に実験的な作品として位置づけられています。リプリーというキャラクターの新たな側面を描き出し、エイリアンという存在の多様性にも焦点を当てています。また、独特の映像美と、ブラックユーモアの要素も特徴的です。
まとめ
『悪魔のエイリアン』は、SFホラーの金字塔である『エイリアン』シリーズに、新たな血を注いだ意欲作です。クローンとして蘇ったリプリー、そして人間とエイリアンが融合した驚異のクリーチャー「ニュー・ブランド」の登場は、シリーズファンに衝撃を与えました。ジャン=ピエール・ジュネ監督による、ダークでゴシックな世界観、そしてグロテスクながらもどこかユーモラスな描写は、他の『エイリアン』作品とは一線を画す魅力となっています。リプリー8という、人間とエイリアンの境界線上に存在するキャラクターの葛藤は、本作に深みを与えています。賛否両論ある作品ではありますが、その独創性と挑戦的な姿勢は、SFホラー映画史において記憶されるべき作品と言えるでしょう。

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