悪魔からの贈り物

SF映画情報

映画:悪魔からの贈り物(原題:Bedazzled)

概要

『悪魔からの贈りもの』(原題:Bedazzled)は、2000年に公開されたアメリカ合衆国のファンタジー・コメディ映画である。1967年の同名映画のリメイク作品であり、巨匠スタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』でHAL 9000の声優を務めたダグラス・レインが、悪魔役で出演していることが話題となった。監督はハロルド・ライミスが務め、脚本はジョー・エスターハズとロバート・シェイが手掛けた。

あらすじ

主人公は、冴えないコンピュータプログラマーであるエリオット(ブレンダン・フレイザー)。彼は、職場で意地悪な同僚にいじめられ、恋愛でも全くうまくいかない、人生に絶望している男だった。そんなエリオットの前に、美しくも妖艶な悪魔(エリザベス・ハーレー)が現れる。悪魔はエリオットに、「魂と引き換えに、どんな願いも叶えてあげよう」と持ちかける。

エリオットは、初恋の相手であるアリソン(フランシス・オコナー)を手に入れるために、悪魔と契約を結ぶ。しかし、悪魔が用意する「願い」は、エリオットが想像していたものとは全く異なり、常に思わぬ落とし穴が待っていた。

例えば、エリオットが「アリソンと結婚したい」と願えば、彼は彼女の夫になるものの、彼女が自分に全く愛情を抱いていないことを知る。また、「大金持ちになりたい」と願えば、彼は麻薬王となり、追われる身となる。このように、悪魔はエリオットの願いを文字通りに、そして皮肉な形で叶えていく。エリオットは、次々と提示される悪魔の誘惑に翻弄されながらも、真の幸福とは何かを模索していくことになる。

登場人物・キャスト

  • エリオット・リチャーズ:ブレンダン・フレイザー(Brendan Fraser) – 主人公。冴えない男性。
  • 悪魔:エリザベス・ハーレー(Elizabeth Hurley) – エリオットの願いを叶える存在。
  • アリソン・ガーデナー:フランシス・オコナー(Frances O’Connor) – エリオットの初恋の相手。
  • ボブ:ハル・ブロック(Hal Brooks) – エリオットの職場の同僚。
  • ジェリー:クリス・エリス(Chris Ellis) – エリオットの職場の同僚。
  • カレン・アバーナシー:ミーガン・カバノー(Megan Cavanagh) – エリオットの職場の同僚。
  • ジム:アーロン・アブームス(Aaron Abumousser) – エリオットの職場の同僚。
  • ジョン:ガブリエル・マクガヴァン(Gabriel Macht) – エリオットの職場の同僚。
  • ダニエル・ジョンソン:モーガン・フリーマン(Morgan Freeman) – 悪魔の従者。
  • 天使:ダグラス・レイン(Douglas Rain) – 悪魔の対極にいる存在。

製作背景

本作は、1967年のイギリス映画『地獄の天使』(原題:Bedazzled)のリメイクである。オリジナル版は、ピーター・クックとダドリー・ムーアが監督・脚本・主演を務め、カルト的な人気を誇る作品であった。リメイクにあたっては、現代的な感覚を取り入れつつ、オリジナルの持つユーモアや風刺の精神を継承することを目指した。

悪魔役には、当時モデルとしても活躍し、その美貌で注目を集めていたエリザベス・ハーレーが抜擢された。彼女の妖艶で魅力的な演技は、悪魔というキャラクターに説得力を持たせ、作品の大きな魅力となっている。一方、主人公エリオットを演じたブレンダン・フレイザーは、冴えない青年から様々な姿へと変貌していくキャラクターをコミカルかつ哀愁たっぷりに演じきった。

監督のハロルド・ライミスは、『ゴーストバスターズ』シリーズや『恋はデジャ・ブ』といったコメディ映画で知られ、本作でも巧みなコメディ演出を見せている。特に、エリオットの願いが裏目に出てしまう様子の描写は、観客に笑いと同時に共感を誘う。

テーマとメッセージ

『悪魔からの贈りもの』は、単なるコメディ映画に留まらず、多くの示唆に富むテーマを含んでいる。

欲望と代償

本作の最も中心的なテーマは、人間の欲望とその代償である。エリオットは、次々と自分の欲望を満たそうとするが、その全てが悪魔によって歪められ、彼を不幸へと導く。これは、安易な欲望の追求がいかに危険であるかを示唆している。

真の幸福

エリオットは、財産、権力、恋愛といった、一般的に幸福とされるものを手に入れようとするが、どれも彼を真に満たすことはなかった。最終的に、彼は物質的なものではなく、自分自身を受け入れ、真実の愛を見つけることこそが、真の幸福であることに気づく。

自己受容

エリオットは、自分自身の欠点や冴えなさから逃れようとするが、悪魔との契約を通して、最終的にはありのままの自分を受け入れることの重要性を学ぶ。自分自身を愛し、肯定することが、幸福への第一歩であることを示唆している。

皮肉なユーモア

本作のユーモアは、しばしば皮肉に満ちている。悪魔がエリオットの願いを捻じ曲げて叶える様子は、人間の滑稽さや愚かさを浮き彫りにし、観客に笑いを提供する。しかし、その笑いの裏には、人間存在への深い洞察がある。

音楽

本作の音楽は、ジョン・デブニー(John Debney)が担当した。劇中では、様々なジャンルの音楽が効果的に使用されており、エリオットの状況の変化や感情の起伏を盛り上げている。特に、悪魔が登場するシーンでは、妖艶でメロディアスな楽曲が、その魅力を一層引き立てている。

批評と評価

『悪魔からの贈りもの』は、公開当時、賛否両論あった。批評家からは、エリザベス・ハーレーの悪魔役の魅力や、ブレンダン・フレイザーのコミカルな演技、そしてハロルド・ライミスの手腕が評価された一方で、ストーリー展開の予測可能性や、一部のギャグが陳腐であるという意見もあった。

しかし、一般の観客からは、その痛快なコメディ要素と、示唆に富むメッセージ性が好意的に受け止められた。特に、悪魔との契約という普遍的なモチーフを、現代的な視点から描いた点が、多くの観客の共感を呼んだ。

その他

  • 劇中に登場する悪魔の衣装は、デザイン性とセクシーさを兼ね備えており、エリザベス・ハーレーの魅力を最大限に引き出している。
  • 悪魔がエリオットに提示する「願い」のバリエーションは豊富で、それぞれがエリオットの人間的な弱さや願望を映し出している。
  • 映画のタイトルである「Bedazzled」は、装飾するという意味の他に、魅了するという意味も持つ。これは、悪魔がエリオットを魅了していく様を象徴している。
  • 『悪魔からの贈りもの』は、単なるエンターテイメントとしてだけでなく、人間心理や欲望について考えさせられる作品としても楽しめる。

まとめ

『悪魔からの贈りもの』は、悪魔との契約という古典的なテーマを、現代的なユーモアとスタイリッシュな映像で描いたファンタジー・コメディである。ブレンダン・フレイザーとエリザベス・ハーレーの魅力的な演技、そしてハロルド・ライミスの巧みな演出により、観客はエリオットの七転八倒を楽しみながら、欲望とその代償、そして真の幸福とは何かについて考えさせられる。軽妙なコメディでありながらも、人間の本質に迫るメッセージが込められた、一見の価値がある作品と言えるだろう。

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