クー!キン・ザ・ザ [DVD]

SF映画

クー!キン・ザ・ザ [DVD]

映画ドラマ:クー!キン・ザ・ザ [DVD] 詳細・感想口コミ・その他

作品概要とあらすじ

映画ドラマ「クー!キン・ザ・ザ」は、1986年にソビエト連邦で製作された、SFコメディであり、同時に風刺作品としても高く評価されているカルト的な人気を誇る作品です。監督は、ソ連の著名な映画監督であるレオニード・ガイダイ。この映画は、一見すると奇妙でナンセンスな物語に思えますが、その奥には当時のソビエト社会に対する痛烈な風刺が込められています。

物語は、モスクワの建設作業員であるマッシュ(ルー・フリャーエフ)と、歌うこととビールをこよなく愛するヴァーリ(ゲオルギー・ダネリヤ)という、ごく普通の二人の男が、偶然にも「キン・ザ・ザ」と呼ばれる異星へと迷い込んでしまうところから始まります。キン・ザ・ザ星は、地球とは全く異なる環境と文化を持つ世界で、そこでは「エツィロプ」という独特の言語が使われています。この「エツィロプ」は、単語の文字を逆から読むという単純なルールで成り立っており、言葉の逆転は、社会における権力関係や階級の逆転をも象徴しているかのようです。

キン・ザ・ザ星では、社会は「プラス」と「マイナス」という二つの階級に分かれており、プラスの者はマイナスの者に対して絶対的な権力を持っています。プラスの者は、特殊な「エツィロプ」の文字が書かれた「エツィロプ」と呼ばれる帽子を被っており、これが身分証明となります。一方、マイナスの者は、「エツィロプ」の帽子を被ることが許されず、常に屈辱的な扱いを受けます。

マッシュとヴァーリは、この異星で自分たちの身分を証明する手段を持たないため、マイナスの階級に落とされてしまいます。彼らは、故郷の地球に帰るための宇宙船を探し求めますが、キン・ザ・ザ星の奇妙なルールや、そこでの人々の生活に翻弄されながら、様々な出来事に巻き込まれていきます。彼らの冒険は、言葉の壁、文化の違い、そして権力構造といった普遍的なテーマを浮き彫りにしていきます。

感想・口コミ

「クー!キン・ザ・ザ」を鑑賞した多くの観客は、そのユニークな世界観と、予想外の展開に魅了されています。まず、この映画の最大の特徴はその「不条理さ」にあります。キン・ザ・ザ星の奇妙なルール、登場人物たちの奇抜な行動、そして予期せぬ事態の連続は、観る者に強烈なインパクトを与えます。「何が起きているのか分からない」という感覚こそが、この映画の魅力であり、観客を惹きつけるフックとなっています。

一方で、この不条理さの裏には、深い風刺が隠されています。特に、当時のソビエト連邦における官僚主義、階級社会、そして市民の自由の制限といった社会問題を、キン・ザ・ザ星の「プラス」と「マイナス」の階級制度や、「エツィロプ」という言葉の逆転という設定を通して、痛烈に批判しています。言葉が逆転することで、本来の意味や価値観が覆される様は、権力によって真実が歪められる現実を想起させます。

登場人物たちのキャラクターも魅力的です。主人公のマッシュとヴァーリは、異星という極限状況に置かれながらも、どこか人間臭さを失わない存在です。彼らのリアクションや、状況を打開しようとする懸命な姿は、観客に共感を呼び起こします。また、キン・ザ・ザ星の住人たちも、個性的で忘れられないキャラクターばかりです。彼らの奇妙な習慣や、独特の価値観は、異文化との遭遇というテーマをより一層際立たせています。

映像表現についても特筆すべき点があります。当時のソ連映画としては、斬新で実験的な映像が多く取り入れられています。独特な色使い、奇妙なデザインの宇宙船や建造物、そして特異な衣装は、キン・ザ・ザ星という異世界の雰囲気を巧みに作り出しています。SF映画としての要素も十分にありながら、どこか手作り感のある、温かみのある映像が、この映画の独特な魅力を醸し出しています。

音楽もこの映画の重要な要素です。「エツィロプ」の文字が書かれた帽子を被った人々が、歌いながら(あるいは歌わずに)行進するシーンは、印象的で耳に残ります。この独特な音楽は、映画の世界観をより一層深め、観客の記憶に刻み込まれます。

総じて、「クー!キン・ザ・ザ」は、単なるSFコメディとして片付けることのできない、多層的な意味を持つ作品です。初めて観る人にとっては、その奇妙さに戸惑うかもしれませんが、一度その世界に足を踏み入れてしまえば、きっとその魅力の虜になるでしょう。観るたびに新たな発見があり、社会への洞察を深めることができる、まさに「カルト」と呼ぶにふさわしい傑作と言えます。

その他

「クー!キン・ザ・ザ」は、その独特な設定とテーマから、多くのファンを生み出してきました。映画公開当時から、ソ連国内では一種の熱狂的な支持を得ており、その影響は映画界のみならず、ファッションや音楽、さらには日常生活にまで及んだと言われています。「エツィロプ」の帽子は、一種のファッションアイテムとして流行し、劇中で登場する小道具なども、人々の間で話題となりました。

この映画は、ソ連崩壊後もその人気を衰えさせることなく、むしろ海外でも再評価され、カルト映画として確固たる地位を築きました。多くの映画祭で上映され、批評家からも高い評価を受けています。その普遍的なテーマは、国境や時代を超えて多くの人々に響くものがあるのでしょう。

DVD化されたことで、より多くの観客がこの名作に触れる機会を得ました。特典映像として、監督のインタビューや、当時の製作秘話などが収録されている場合もあります。そうした付加情報は、映画への理解を深める上で非常に役立つでしょう。

「クー!キン・ザ・ザ」は、単なるエンターテイメント作品としてだけでなく、社会風刺や芸術作品としても高い価値を持つ映画です。SF映画の枠を超えた、ユニークな体験を求める方には、ぜひ一度鑑賞していただきたい作品です。その奇妙で魅力的な世界観は、あなたの想像力を掻き立て、深い感動と考察をもたらしてくれるはずです。

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