スローターハウス5 [DVD]

映画ドラマ：スローターハウス5 [DVD]

作品概要とあらすじ

映画『スローターハウス5』は、カート・ヴォネガット・ジュニアの同名小説を原作としたSFブラックコメディです。1972年に公開され、その独特な世界観と反戦メッセージでカルト的な人気を博しました。監督はジョージ・ロイ・ヒル。

物語は、第二次世界大戦中のドレスデン爆撃を体験した主人公ビリー・ピルグリムの視点から描かれます。ビリーは、空襲の最中に「失われた」経験をしました。そして、戦後、彼は奇妙な現象に悩まされるようになります。それは、時間軸がバラバラになってしまう「タイムスリップ」です。ビリーは、過去、現在、未来へとランダムに、そして繰り返し時間を行き来するようになります。

そんなビリーの前に現れるのが、宇宙人「トラルファマドール星人」です。彼らは、時間とは単なる幻想であり、宇宙のすべての瞬間は同時に存在していると説きます。そして、トラルファマドール星人の教えに基づき、ビリーは人生の苦しみや悲しみから解放され、受動的に生きていくことを選択します。しかし、その一方で、彼は愛する人々との別れや、戦争の悲惨な記憶にも向き合わなければなりません。

映画は、ビリーの奔放な時間旅行を追う形で展開します。彼の人生の断片が、時系列を無視して次々と映し出されます。愛する妻ヴァーロバとの出会いと別れ、軍隊での仲間たちとの交流、そして、彼が最もトラウマを抱えるドレスデンでの体験。これらの出来事が、フラッシュバックやフォワードを繰り返し、観客はビリーと共に混乱し、そして彼の独特な死生観に触れることになります。

見どころと魅力

『スローターハウス5』の最大の魅力は、その前衛的で実験的な語り口です。時間軸を巧みに操り、非現実的な出来事を現実のように描くことで、観客は登場人物の心理状態や、戦争がもたらす精神的な影響を深く体験できます。

特に、ビリーがトラルファマドール星人に連れ去られ、彼らの惑星で経験する描写は、幻想的でありながらも、人生や死に対する新たな視点を提供します。ビリーが「悲しいことはすべて、永遠に起こり続ける」というトラルファマドール星人の教えを受け入れることで、彼は個人の苦しみから解放され、宇宙的な視点を持つようになります。

また、映画はブラックユーモアを交えながら、戦争の不条理さや悲惨さを告発しています。ドレスデン爆撃という史実を背景にしながらも、それを直接的に描くだけでなく、ビリーの奇妙な体験を通して、戦争が人間の精神に与える影響を風刺的に表現しています。

マイケル・カントが演じるビリー・ピルグリムは、その飄々とした雰囲気と、内面に抱える深い苦悩を見事に演じきっています。彼の存在が、この独特な世界観を支えています。

感想口コミと評価

『スローターハウス5』は、公開当時から賛否両論がありましたが、その独創性とメッセージ性は、多くの映画ファンから高く評価されています。「理解するのは難しいが、忘れられない映画」「SF映画の常識を覆した」「反戦映画として非常に強力」といった肯定的な意見が多く見られます。

一方で、「難解すぎる」「ストーリーが追いにくい」といった意見もあります。確かに、非線形な時間描写や、シュールな展開は、人によっては戸惑いを感じるかもしれません。しかし、その難解さこそが、この映画の深みであり、観る者に多くの問いを投げかける要素でもあります。

特に、映画を観終わった後に、原作小説を読み返したり、解説などを参照することで、より一層作品の意図やテーマを理解できるようになるという声もあります。一度観ただけでは理解しきれない、何度でも観返したくなるような奥深さを持っていると言えるでしょう。

DVD版について

DVD版『スローターハウス5』は、このカルト的な名作を自宅で手軽に楽しむことができる貴重な媒体です。画質や音質は、制作された年代を考慮すると、現代の作品には及びませんが、作品の持つ独特な雰囲気を損なうものではありません。

DVD特典としては、監督やキャストのインタビュー、メイキング映像、オリジナル劇場予告編などが収録されている場合があります。これらの特典映像は、作品の背景や制作意図を知る上で非常に興味深いものとなるでしょう。

「スローターハウス5」は、単なるSF映画や戦争映画として片付けられない、哲学的な要素も多く含んだ作品です。時間、運命、苦しみ、そして死といった普遍的なテーマを、ユニークな視点から描いています。もし、あなたがこれまでに体験したことのないような映画体験を求めているのであれば、この『スローターハウス5』のDVDは、きっとあなたにとって特別な一本となるはずです。

この映画は、観る者によって様々な解釈が可能です。ビリーの体験は、単なるSF的な描写としてではなく、私たちが日常で抱える不安や苦悩、そしてそれらとの向き合い方を映し出しているとも言えます。トラルファマドール星人の教えは、一見すると諦めのようにも聞こえますが、それはむしろ、人生のすべての瞬間を肯定し、苦しみから自由になるための、ある種の到達点なのかもしれません。

映画を観終えた後、あなたはきっと、時間とは何か、人生とは何か、そして死とは何か、といったことに思いを馳せることになるでしょう。この『スローターハウス5』は、そんな風に観客の思考を刺激する、稀有な映画なのです。