ドラキュラ’72 (Dracula A.D. 1972) 詳細・その他
概要
『ドラキュラ’72』(原題: Dracula A.D. 1972) は、1972年に公開されたイギリス・アメリカ合作のホラー映画です。ハマー・フィルム・プロダクションズ製作で、クリストファー・リーが吸血鬼ドラキュラ伯爵を、ピーター・カッシングがヴァン・ヘルシング教授を演じる、ハマー・ホラーの代表作の一つとして知られています。本作は、舞台を現代のロンドンに移し、伝統的なゴシックホラーの要素と当時のカウンターカルチャーを融合させた野心的な試みを行いました。
あらすじ
物語は、1972年のロンドンから始まります。吸血鬼ドラキュラ伯爵は、19世紀末にヴァン・ヘルシング教授によって滅ぼされたと思われていました。しかし、その血を引く末裔であるカリ・マクマイン（ピーター・カッシングの娘役）とその友人たちは、ドラキュラの復活を企むカルト教団の存在を知ります。教団のリーダーは、ドラキュラ伯爵の復活のために、カリの友人であるジョン・タッカーを犠牲にしようとします。
一方、ヴァン・ヘルシング教授（ピーター・カッシング）は、ドラキュラの復活を予感し、孫娘であるカリと共に、再びドラキュラとの死闘を繰り広げることになります。現代のロンドンを舞台に、ドラキュラは最新のテクノロジーや若者文化を利用しながら、その恐怖を拡大させていきます。
キャスト
- クリストファー・リー：ドラキュラ伯爵
- ピーター・カッシング：ローレンス・ヴァン・ヘルシング教授 / ヴァン・ヘルシング教授
- ステファニー・ビッチャム：ジェシカ・ヴァン・ヘルシング
- ピーター・フランシス・パーシー：ジョン・タッカー
- マドリン・スミス：アンナ
- マイケル・コールマン：トム
- クリストファー・ネルソン：ジャッキー
- フィリップ・マシューズ：ボブ
- バリー・アンドリュース：ペスト
製作背景と特徴
現代への舞台設定
本作の最大の特徴は、ドラキュラ伝説の舞台を19世紀のトランシルヴァニアやヴィクトリア朝ロンドンから、1970年代のロンドンへと移した点にあります。当時のヒッピー文化やディスコ、クラブといった現代的な要素が物語に織り交ぜられ、ハマー・ホラーに新たな風を吹き込もうとしました。ドラキュラが最新のファッションを身にまとい、若者たちを誘惑する姿は、従来のイメージとは一線を画します。
音楽と雰囲気
映画のサウンドトラックは、当時のサイケデリック・ロックやプログレッシブ・ロックの影響を受けており、映画のモダンな雰囲気を強調しています。特に、クライマックスシーンでの音楽の使用は、緊迫感を高め、観客を惹きつけます。
ヴァン・ヘルシング教授の再登場
ピーター・カッシング演じるヴァン・ヘルシング教授は、本作で再びドラキュラと対峙します。彼が孫娘と共に現代のドラキュラに立ち向かう姿は、シリーズのファンにとって魅力的な要素です。カッシングの演技は、老齢ながらも知性と勇気に満ち溢れており、ドラキュラとの対比を際立たせています。
クリストファー・リーのドラキュラ
クリストファー・リーにとって、この作品は彼が演じる最後のドラキュラ伯爵となりました。彼の演じるドラキュラは、魅力的でありながらも、どこか孤独で悲哀を帯びており、単なる悪役以上の深みを持っています。現代のロンドンという舞台で、彼のカリスマ性と恐怖がより際立っています。
評価と批評
『ドラキュラ’72』は、その斬新な試みから、公開当時賛否両論を巻き起こしました。伝統的なホラーファンからは、舞台設定の変更や現代的な要素の導入に対する戸惑いの声もあった一方で、新しい世代の観客からは、その革新性とエンターテイメント性が評価されました。
特に、クリストファー・リーとピーター・カッシングという二大スターの共演は、本作の大きな魅力であり、彼らの演技が映画を牽引しています。現代的な舞台設定は、当時の若者文化や社会情勢を反映しており、時代ごとのドラキュラ像の変化を考察する上でも興味深い作品と言えるでしょう。
一方で、ストーリー展開の都合や、一部の演出に対する批判も見られます。しかし、ハマー・フィルムが時代に合わせてホラー映画の表現を模索した意欲作として、その功績は大きいと評価されています。
時代背景
1970年代は、カウンターカルチャーが成熟し、社会全体が多様化していく時代でした。そうした時代背景の中、ドラキュラという古典的なキャラクターを現代に蘇らせる試みは、当時の観客に新鮮な驚きを与えたと考えられます。若者文化の象徴であるクラブやファッションをドラキュラの舞台に取り入れることで、古典と現代の対比が生まれ、独特の雰囲気を醸し出しています。
ハマー・フィルムの転換期
『ドラキュラ’72』は、ハマー・フィルムがそれまでのゴシックホラーのスタイルから、より現代的なアプローチへと転換しようとしていた時期の作品です。この映画は、その後のハマー・フィルムの作品に影響を与え、ホラー映画の可能性を広げる一因となりました。
まとめ
『ドラキュラ’72』は、クリストファー・リーとピーター・カッシングという二人のレジェンドが共演し、ドラキュラ伝説を現代のロンドンへと移した、ハマー・フィルムの意欲作です。その斬新な設定と、当時のカウンターカルチャーを取り入れた演出は、賛否両論を呼びながらも、ホラー映画の歴史においてユニークな位置を占めています。古典的な恐怖と現代的な要素が融合した本作は、時代を超えて観る者を惹きつける力を持っています。
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