ドラキュラ’72
概要
1972年に公開された映画「ドラキュラ’72」(原題:Dracula A.D. 1972)は、ハマー・フィルム・プロダクションズによるドラキュラ映画シリーズの一作であり、シリーズの伝統を現代に持ち込む試みがなされた作品です。監督はアラン・ギブソンが務め、クリストファー・リーが伝説的な吸血鬼ドラキュラ伯爵を、ピーター・カッシングがドラキュラハンターのヴァン・ヘルシング教授を演じるという、シリーズのファンにとってはお馴染みの顔合わせとなっています。
あらすじ
物語の舞台は、1970年代のロンドン。60年代にドラキュラを滅ぼしたとされるヴァン・ヘルシング教授は、その息子の手によってドラキュラが復活してしまうという悲劇に見舞われます。ドラキュラは、現代のロンドンの若者たちの間を徘徊し、彼らを次々と餌食にしていきます。特に、ドラキュラの宿敵であるヴァン・ヘルシング教授の孫娘、ヴァネッサに目をつけ、彼女を吸血鬼に変えようと企みます。現代のサウンドとファッションが取り入れられ、ドラキュラがサイケデリックなパーティーに紛れ込むシーンなども登場します。ヴァン・ヘルシング教授は、孫娘を守り、そして再びドラキュラを滅ぼすために、再び死闘を繰り広げることになります。
キャスト
- クリストファー・リー:ドラキュラ伯爵
- ピーター・カッシング:ローレンス・ヴァン・ヘルシング教授
- ステファニー・ビッチャム:ヴァネッサ・ヴァン・ヘルシング
- ピーター・アドアー:ジョニー・アルヴァー
- クリストファー・ニーム:ドナルド
制作背景と特徴
「ドラキュラ’72」は、ハマー・フィルムがドラキュラ映画という古典的な題材を、より現代的な観客にアピールさせるための実験的な試みでした。1970年代のロンドンの若者文化、ロックミュージック、そして当時のファッションが物語に色濃く反映されています。これにより、従来のゴシックホラーの雰囲気と、当時のニューウェーブ的な要素が融合した、独特な世界観が生まれています。
クリストファー・リー演じるドラキュラは、相変わらず圧倒的な存在感を放ち、そのカリスマ性と恐怖は健在です。一方、ピーター・カッシング演じるヴァン・ヘルシング教授も、知性と執念深さをもってドラキュラに立ち向かいます。二人のベテラン俳優による演技合戦は、本作の見どころの一つです。
しかし、本作はシリーズの中でも評価が分かれる作品でもあります。現代的な設定への挑戦は、一部のファンからは「ドラキュラらしさが失われた」という批判もありました。一方で、その斬新なアプローチや、当時の時代感を捉えた映像表現を評価する声もあります。特に、ドラキュラが現代の若者たちに紛れ込むシーンや、サイケデリックなパーティーの描写は、この映画を象徴する要素と言えるでしょう。
音楽
本作の音楽は、当時のロックミュージックを取り入れたサウンドトラックが特徴的です。劇中では、サイケデリックなロックバンドの演奏シーンなどが登場し、映画の雰囲気を盛り上げています。これは、ハマー・フィルムが、より若い観客層を取り込もうとした意図が伺える部分です。
ロケーション
撮影は、ロンドンの中心部で行われました。現代的な街並みと、ドラキュラという古典的な怪物が共存する光景は、本作のユニークな雰囲気を醸し出しています。特に、セント・ポール大聖堂周辺のシーンは、その歴史的な重みと現代的な喧騒が交錯する様を描写しています。
影響と評価
「ドラキュラ’72」は、ハマー・フィルムのドラキュラシリーズにおける転換点となる作品の一つと見なされています。古典的なホラーの枠を超え、現代的な要素を取り込むことで、シリーズに新たな息吹を吹き込もうとした試みは、その後のホラー映画にも影響を与えた可能性があります。
critics や観客からの評価は、賛否両論が混在しています。古典的なドラキュラ映画のファンからは、その大胆な現代化に戸惑いの声も聞かれますが、一方で、新しい試みや当時の時代背景を反映した作品として、一定の評価を得ています。クリストファー・リーとピーター・カッシングという二大スターの共演は、この映画に揺るぎない魅力を与えています。
本作は、ドラキュラという古典的なキャラクターが、時代と共にどのように変容し、現代社会にどのように影響を与えるのかを探求した作品と言えるでしょう。その実験的なアプローチは、ホラー映画の進化という観点からも興味深い作品です。
まとめ
「ドラキュラ’72」は、ハマー・フィルムのドラキュラシリーズにおいて、古典的なゴシックホラーの枠を超え、1970年代のロンドンという現代的な舞台にドラキュラを持ち込んだ意欲作です。クリストファー・リーとピーター・カッシングという、ドラキュラ映画の象徴とも言える二人の名優の競演、そして当時の若者文化やサウンドを取り入れた斬新なアプローチが特徴です。
この作品は、ドラキュラという不滅のキャラクターが、現代社会とどのように対峙し、その恐怖をどのように現代に蘇らせるのかを描き出しています。賛否両論はありますが、ハマー・フィルムの挑戦的な姿勢を示す作品として、また、ドラキュラ映画の歴史における一石を投じた作品として、記憶されるべき作品と言えるでしょう。
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