帰ってきたドラキュラ

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映画『帰ってきたドラキュラ』詳細

作品概要

『帰ってきたドラキュラ』(原題: Dracula Dead and Loving It)は、1995年に公開されたアメリカ合衆国のコメディ映画です。伝説の吸血鬼ドラキュラ伯爵を題材にしたパロディ作品であり、数々のホラー映画へのオマージュと、それらをコミカルに崩していくナンセンスなギャグが特徴です。監督はメル・ブルックスが務め、彼ならではのユーモアセンスが随所に光ります。主演にはレスリー・ニールセンがドラキュラ伯爵を演じ、そのコミカルな演技が作品の魅力を一層引き立てています。

あらすじ

物語は、数百年ぶりに眠りから覚めたドラキュラ伯爵(レスリー・ニールセン)が、現代のロンドンに現れるところから始まります。彼は、かつての僕であったレナルド・パーシー博士(ピーター・マックリン)の孫であるジョン・パーシー(スティーヴン・ウェイン・スミス)を訪ねてきます。ジョンは、エキセントリックな吸血鬼退治の専門家であるバン・ヘルシング教授(メル・ブルックス)の講義に夢中になっており、ドラキュラ伯爵の存在に気づきません。

ドラキュラ伯爵は、亡き妻の面影を持つジョンに興味を持ち、彼に近づこうとします。しかし、現代社会はドラキュラ伯爵にとって予想外のことばかり。車の運転、テレビ、そして何よりも、吸血鬼退治の専門家であるバン・ヘルシング教授の存在に、彼は翻弄されます。ドラキュラ伯爵は、ジョンの恋人であるミーナ・マーレイ(エイミー・ヤスベック)にも手を出し、彼女を吸血鬼にしようと企みます。

一方、バン・ヘルシング教授は、ドラキュラ伯爵の仕業だと確信し、ジョンと共に彼を退治しようと奮闘します。教授は、ドラキュラ伯爵の弱点であるニンニク、十字架、そして太陽光を駆使して彼を追い詰めます。しかし、ドラキュラ伯爵もまた、様々な手段で彼らの攻撃をかわし、ユーモラスな追跡劇が繰り広げられます。

最終的に、ドラキュラ伯爵はバン・ヘルシング教授とジョンの協力によって滅ぼされるのか、それとも彼らの悪巧みが成功するのか。二転三転する展開の中で、観客は爆笑必至のドタババ劇に引き込まれていきます。

キャスト

  • ドラキュラ伯爵:レスリー・ニールセン
  • バン・ヘルシング教授:メル・ブルックス
  • ジョン・パーシー:スティーヴン・ウェイン・スミス
  • ミーナ・マーレイ:エイミー・ヤスベック
  • レナルド・パーシー博士:ピーター・マックリン

製作背景と特徴

メル・ブルックスのコメディ

メル・ブルックス監督は、『プロデューサーズ』、『ヤング・フランケンシュタイン』、『スペースボール』など、数々の名作パロディコメディを生み出してきた巨匠です。本作でも、彼の得意とする古典的なホラー映画への愛情と、それを茶化す独特のユーモアセンスが存分に発揮されています。古典的なドラキュラ伝説を現代に置き換え、予期せぬ展開とキャラクターのコミカルな言動で観客を笑いの渦に巻き込みます。

レスリー・ニールセンの演技

レスリー・ニールセンは、本作でドラキュラ伯爵という、本来は恐ろしい存在を、どこか憎めない、間抜けなキャラクターとして演じきっています。彼の顔芸や間の取り方、そして真顔で繰り出されるナンセンスなセリフは、作品のコメディ度を一層高めています。彼の存在なくして、この映画の成功は語れません。

オマージュとパロディ

本作は、ブラム・ストーカーの小説『ドラキュラ』はもちろんのこと、ハマー・フィルム・プロダクションズのドラキュラ映画シリーズ、そして『ノスフェラトゥ』、『ドラキュラ’72』など、数々のドラキュラ関連作品へのオマージュが散りばめられています。有名なシーンやキャラクターを巧みに引用し、それを独自の解釈でパロディ化することで、ホラーファンでなくても楽しめるエンターテイメント作品となっています。

時代設定とギャップ

ドラキュラ伯爵が、数百年ぶりに目覚めた現代社会に戸惑い、適応しようとする様が、本作の大きな笑いの種となっています。自動車、電話、インターネットといった現代のテクノロジーに彼がどう反応するのか、そして現代人の常識とのズレが、コミカルな状況を生み出します。

評価と批評

『帰ってきたドラキュラ』は、公開当時、批評家からの評価は賛否両論でしたが、メル・ブルックス作品のファンや、レスリー・ニールセンのコメディ演技を好む層からは、カルト的な人気を博しました。彼の作品に共通する、過激で下品なユーモアや、古典的な物語を大胆にアレンジする手法は、一部の観客にとっては受け入れがたいものであったかもしれません。しかし、その一方で、数々のパロディやウィットに富んだギャグ、そしてレスリー・ニールセンの怪演は、多くの観客に笑いを提供しました。

特に、ホラー映画の tropes(お決まりの展開や表現)を熟知している観客にとっては、本作のパロディ要素はより一層楽しめたと言えるでしょう。ドラキュラ伯爵が「血は栄養源」というセリフを真顔で語るシーンや、バン・ヘルシング教授の過剰な吸血鬼退治への情熱など、古典的なホラー作品への愛憎が入り混じったパロディ精神が、本作の魅力となっています。

まとめ

『帰ってきたドラキュラ』は、メル・ブルックス監督とレスリー・ニールセンという、コメディ界の巨匠たちがタッグを組んだ、珠玉のパロディコメディ映画です。古典的なドラキュラ伝説を大胆にアレンジし、数々のホラー映画へのオマージュを散りばめながら、現代社会とのギャップやキャラクターのコミカルな言動で観客を笑いの渦に巻き込みます。

レスリー・ニールセン演じるドラキュラ伯爵の、どこか憎めない間抜けなキャラクターぶりは秀逸で、彼の真顔での演技が作品のユーモアを牽引しています。また、バン・ヘルシング教授役のメル・ブルックス自身による、熱血漢でありながらもどこかズレたキャラクターも、物語に彩りを添えています。

本作は、ホラー映画の常識を覆し、恐ろしいはずの吸血鬼をコミカルな存在として描くことで、新しいエンターテイメントの形を提示しました。ホラー映画ファンはもちろんのこと、軽快で笑えるコメディを求めている人々に、ぜひ一度は観ていただきたい作品です。公開から年月が経った今でも、その爆笑必至のギャグと、レスリー・ニールセンの伝説的な演技は色褪せることなく、多くの観客を魅了し続けています。

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