怪談昇り竜

SF映画情報

怪談昇り竜:詳細・その他

作品概要

「怪談昇り竜」は、1966年に公開された日本の怪談映画です。東映東京撮影所が製作し、東映が配給しました。監督は加藤泰、脚本は吉田義昭が務めました。主演には、怪談映画のスターである若山富三郎と、当時人気を博した岡田眞澄が名を連ねています。

本作は、昭和初期の東京を舞台に、ある凄惨な事件とそれにまつわる怪奇現象を描いています。当時の日本社会に蔓延していた貧困や迷信、そして人々の心の闇が、恐怖と共に描き出されており、怪談映画の傑作として今なお語り継がれています。

あらすじ

物語は、東京の下町にある古い長屋に住む貧しい人々を中心に展開します。主人公の一人である鉄次(若山富三郎)は、日雇い労働で生計を立てる男で、妹であるお春(松本典子)の看病をしていました。お春は原因不明の病に伏しており、次第に衰弱していきます。

一方、同じ長屋に住む竹三(岡田眞澄)は、裏社会で生計を立てる男でした。彼は、ある夜、長屋の住人であるおとき(三條美紀)の不正な金儲けを知り、それをネタに脅迫します。しかし、その最中におときが謎の死を遂げ、長屋には不穏な空気が漂い始めます。

そこへ、人々に恐れられる謎の男が現れます。この男は、長屋の過去にまつわる因縁の人物であり、復讐のために現れたとも噂されていました。男の出現と共に、長屋では次々と不可解な出来事が起こり始めます。壁から現れる奇妙な音、不気味な人影、そして次々と起こる死。長屋の住人たちは、次第に恐怖に囚われていきます。

鉄次は、妹の病と長屋で起こる怪異現象の関連性を疑い始めます。彼は、長屋に隠された恐ろしい秘密と、昇り竜と呼ばれる謎の存在に迫っていきます。果たして、鉄次は妹を救い、長屋に潜む恐怖を打ち破ることができるのでしょうか。

主な登場人物とキャスト

* 鉄次(若山富三郎):主人公。妹思いで、長屋の怪異に立ち向かう。
* 竹三(岡田眞澄):裏社会に生きる男。長屋の秘密に深く関わる。
* お春(松本典子):鉄次の妹。原因不明の病に苦しむ。
* おとき(三條美紀):長屋の住人。不正な金儲けに関わっていた。
* 謎の男:長屋の過去に因縁を持つ、不気味な存在。

若山富三郎の鬼気迫る演技は、本作の恐怖を一層引き立てています。また、岡田眞澄の影のある魅力も、物語に深みを与えています。

制作背景と評価

「怪談昇り竜」は、1960年代後半に隆盛を誇った東映の怪談映画シリーズの一作です。当時の社会情勢を反映した、暗く重い雰囲気が特徴であり、単なる怪談話に留まらない、人間ドラマとしても評価されています。

加藤泰監督は、独特の演出で、観客の心理を巧みに操り、じわじわと迫る恐怖を表現しました。特に、映像の陰影や効果音を巧みに利用した演出は、本作の怪奇色を強めています。

公開当時は、そのダークな作風から賛否両論ありましたが、時代が下るにつれて、その芸術性の高さや、怪談映画としての完成度が再評価されるようになりました。現在では、カルト的な人気を誇り、怪談映画ファンには必見の作品となっています。

作品のテーマと見どころ

本作の最も大きなテーマの一つは、人間の欲望と業です。長屋に住む人々は、貧困にあえぎながらも、金銭欲や嫉妬、復讐心といった負の感情に囚われていきます。これらの感情が、怪奇現象を呼び起こす引き金となっていることが示唆されています。

また、迷信や因習といった、古き良き日本の恐ろしい側面も描かれています。登場人物たちが得体の知れない恐怖に怯える姿は、当時の人々の精神的な不安を映し出しているとも言えるでしょう。

見どころとしては、まず若山富三郎の圧倒的な存在感が挙げられます。彼の凄みのある演技は、観る者に強烈な印象を残します。次に、加藤泰監督の独創的な映像美です。画面の構図や光と影のコントラストが、独特の不気味さを醸し出しています。そして、緻密に練られたストーリーと、予期せぬ展開も、観客を飽きさせない要素です。

特に、「昇り竜」という象徴的なモチーフが、物語全体に不気味な影を落としており、それがどのように物語の核心に結びつくのか、最後まで目が離せません。

その他

* 本作は、カラー作品であり、当時の技術を駆使した迫力ある映像が楽しめます。
* 音楽も本作の恐怖を盛り上げる重要な要素となっており、不気味な旋律が印象的です。
* 怪談映画としての王道を押さえつつも、人間ドラマとしての深みも持ち合わせているため、幅広い層の観客に訴えかける力があります。
* 一部のシーンには、ショッキングな描写も含まれており、苦手な方は注意が必要です。
* 日本映画専門チャンネルやDVDなどで鑑賞可能な場合が多いです。

まとめ

「怪談昇り竜」は、単なる恐怖を与えるだけの怪談映画ではなく、人間の暗部や社会の歪みをも描き出した、重厚な作品です。若山富三郎の熱演、加藤泰監督の独特の演出、そして不気味な物語が見事に融合し、観る者の心に深い爪痕を残します。怪談映画の傑作として、時代を超えて愛される理由が、本作には詰まっています。

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