クレージーの大爆発:詳細・その他
作品概要
クレージーの大爆発(原題:The Pink Panther Strikes Again)は、1976年に公開されたイギリス・アメリカ合作のコメディ映画です。ピンクパンサー・シリーズの第5作目にあたり、ピーター・セラーズ演じるクルーゾー警部が、かつての同僚だったドレフュスを巡る陰謀に巻き込まれる様子を描いています。前作ピンクパンサーの誘惑で、クルーゾー警部によって精神病院送りにされたドレフュスが、復讐のために世界征服を企むという、シリーズの中でも特にスケールの大きな物語となっています。監督・脚本はブレイク・エドワーズが務め、彼のユーモアセンスが随所に光る作品です。
あらすじ
物語は、クルーゾー警部(ピーター・セラーズ)が、ある日突然、世界各地で発生している暗殺事件の調査を命じられるところから始まります。これらの暗殺事件の背後には、かつてクルーゾー警部によって精神病院へ送られた、天才的な悪役チャーリー・ドレフュス(ハーバート・ロム)がいました。ドレフュスは、クルーゾー警部への復讐と、世界征服を企むために、世界中の超一流の殺し屋たちを雇い、彼らを利用していました。ドレフュスは、クルーゾー警部を陥れるために、巧みに偽の証拠を作り上げ、世界中を混乱に陥れます。
クルーゾー警部は、持ち前のドジで、事件の真相に迫るのかと思いきや、むしろ状況を悪化させてしまいます。彼の周りでは、次々と奇妙な出来事が起こり、彼自身も危うい状況に追い込まれます。しかし、クルーゾー警部は、その天然の運と、類まれなる(?)洞察力で、ドレフュスの陰謀に立ち向かっていきます。ドレフュスは、クルーゾー警部を始末するために、様々な罠を仕掛けますが、クルーゾー警部は、それをことごとく掻い潜り、時には偶然、時には意図せず、ドレフュスの計画を狂わせていきます。
映画は、パリ、ロンドン、そしてドレフュスが築き上げた巨大な要塞まで、舞台を移しながら展開します。クルーゾー警部は、様々な国の警察と協力したり、時には衝突したりしながら、ドレフュスの計画を阻止しようと奔走します。クライマックスでは、ドレフュスの要塞に潜入したクルーゾー警部が、ドレフュス本人と対峙することになります。ドレフュスは、クルーゾー警部を抹殺しようとしますが、クルーゾー警部の間抜けな行動が、再びドレフュスの計画を台無しにしてしまうのです。
登場人物
クルーゾー警部 (Inspector Jacques Clouseau)
ピーター・セラーズが演じる、フランス警察の警部。天才的な観察眼を持つと自負しているが、実際には極度のドジで、彼の周りでは常に騒動が起きている。その不注意さが、時として事件解決の糸口となることもある。彼のフランス訛りの英語は、このシリーズの大きな魅力の一つ。本作では、ドレフュスの復讐の標的となり、危険な状況に何度も追い込まれる。
チャーリー・ドレフュス (Chief Inspector Charles Dreyfus)
ハーバート・ロムが演じる、クルーゾー警部の元上司。クルーゾー警部によって精神病院に送られた過去から、彼に激しい憎悪を抱いている。復讐のために、世界征服という巨大な計画を立て、世界中の殺し屋を雇い、最新技術を駆使してクルーゾー警部を陥れようとする。彼の狂気とクルーゾー警部への執着が、物語の原動力となっている。
キャサリン・バル (Caterina Baldwin)
ジョアンナ・ラムレイが演じる、クルーゾー警部が調査する暗殺事件の関係者。クルーゾー警部が惹かれる女性であり、物語の展開に一役買う。
フランソワ・デュバル (François Duval)
マーク・ディグナムが演じる、クルーゾー警部の部下。クルーゾー警部の騒動に巻き込まれ、辟易している。
制作の背景と特徴
クレージーの大爆発は、ピンクパンサー・シリーズの中でも、特にSF的な要素やスパイ映画のパロディが取り入れられた作品です。ブレイク・エドワーズ監督は、ピーター・セラーズのコメディセンスを最大限に引き出し、ドタバタ劇の中に、鋭い風刺やユーモアを織り交ぜました。ドレフュスが作り上げた巨大な秘密基地や、最新兵器などは、当時のスパイ映画へのオマージュであり、それらをクルーゾー警部のドジな行動が攪乱していく様が、大きな笑いを生み出しています。
本作で特に印象的なのは、ドレフュスの巨大な要塞と、そこから発射される破壊光線兵器です。この兵器は、世界を脅かす存在として描かれていますが、クルーゾー警部の登場によって、その計画は滑稽なものへと変貌していきます。また、ピーター・セラーズの身体を張った演技や、状況をさらに悪化させる彼の予測不能な行動は、観客を惹きつけ、笑いの渦に巻き込みます。
音楽も本作の魅力の一つであり、ヘンリー・マンシーニによる「ピンクパンサーのテーマ」は、この映画シリーズを象徴する楽曲として、本作でも印象的に使用されています。ドレフュスの狂気や、クルーゾー警部のドタバタ劇に、軽快な音楽が加わることで、作品全体のユーモラスな雰囲気が一層引き立てられています。
評価と影響
クレージーの大爆発は、公開当時、興行的にも成功を収め、シリーズの人気を不動のものとしました。ピーター・セラーズのクルーゾー警部というキャラクターは、世界中で愛され、彼の存在なくしては、このシリーズは語れません。本作は、その後のコメディ映画に大きな影響を与え、ドタバタ劇やキャラクター中心のコメディのテンプレートともなりました。
批評家からは、ブレイク・エドワーズ監督の斬新な演出と、ピーター・セラーズの卓越したコメディ演技が高く評価されました。特に、ドレフュスとクルーゾー警部の対立構造は、単なる悪役とヒーローの関係ではなく、狂気と純粋な(?)愚かさのぶつかり合いとして描かれており、観客に強い印象を残しました。シリーズ全体を通して、クルーゾー警部のキャラクターは、観る者に飽きさせない魅力を持っており、本作もその魅力を存分に発揮した作品と言えるでしょう。
まとめ
クレージーの大爆発は、ピンクパンサー・シリーズの中でも、最も大胆でユーモラスな作品の一つです。ピーター・セラーズ演じるクルーゾー警部の、予測不能な行動と、ハーバート・ロム演じるドレフュスの狂気に満ちた復讐劇が、見事に融合し、観客を爆笑の渦に巻き込みます。ドレフュスの壮大な陰謀と、それを台無しにしてしまうクルーゾー警部のドジっぷりは、何度見ても飽きさせない魅力があります。アクション、コメディ、そしてスパイ映画のパロディが絶妙に組み合わさった本作は、ピンクパンサー・シリーズのファンならずとも、ぜひ一度は観ておきたい名作です。ブレイク・エドワーズ監督の巧みな演出と、ピーター・セラーズの天才的なコメディセンスが光る、エンターテイメント性の高い作品と言えるでしょう。

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