メリー・ポピンズ:詳細・その他
概要
『メリー・ポピンズ』は、1964年に公開されたウォルト・ディズニー・プロダクション製作のミュージカル・ファンタジー映画です。P.L.トラヴァースの同名の児童文学シリーズを原作とし、監督はロバート・スティーヴンソンが務めました。本作は、世界中に数多くのファンを持つ不朽の名作として、現在も愛され続けています。
あらすじ
物語は、ロンドンのバンクス家を舞台に始まります。両親の仕事が忙しく、子供たちの面倒を見るベビーシッターが次々と辞めてしまうことに悩むバンクス夫妻のもとに、魔法使いのベビーシッター、メリー・ポピンズが現れます。彼女は風に乗ってやってきた、謎めいた魅力を持つ女性です。メリー・ポピンズは、いたずら好きのジェーンとマイケルをはじめとする子供たちに、歌や踊り、そして魔法を駆使して、驚きと喜びに満ちた日々をもたらします。
彼女の魔法は、絵本の世界に飛び込んだり、空を飛んだり、動物たちとおしゃべりをしたりと、子供たちの想像力を刺激し、日常を特別なものに変えていきます。しかし、メリー・ポピンズは、子供たちが自立し、両親との絆を深めることを教えるため、突然現れたかのように、いつか去っていく運命にありました。
物語は、バンクス家の人々が、メリー・ポピンズとの出会いを通じて、家族の愛や絆、そして人生の喜びを再発見していく姿を描いています。彼女が去った後も、子供たちの心には、彼女が残した教えと、忘れられない思い出が深く刻み込まれていきます。
主な登場人物
メリー・ポピンズ
ジュリー・アンドリュース が演じる、本作の主人公。空飛ぶ能力を持つ、厳格でありながらも愛情深いベビーシッター。彼女の歌声と、現実離れした魔法は、観る者すべてを魅了します。
バート
ディック・ヴァン・ダイク が演じる、煙突掃除夫であり、絵描き。メリー・ポピンズの良き相棒であり、彼女の魔法に協力する陽気なキャラクターです。彼は歌と踊りで、物語に活気を与えます。
ジェーン・バンクス
カレン・ドトリス が演じる、バンクス家の長女。しっかり者で、弟のマイケルを気遣う優しい女の子です。
マイケル・バンクス
マシュー・ガーバー が演じる、バンクス家の長男。好奇心旺盛で、メリー・ポピンズの魔法に一番夢中になる少年です。
ミスター・バンクス
デヴィッド・トムリンソン が演じる、バンクス家の父親。仕事に没頭し、子供たちとの関わりを疎かにしがちでしたが、メリー・ポピンズの出現によって変化していきます。
ミセス・バンクス
グリンディス・ジョンストン が演じる、バンクス家の母親。気丈で、社交界でも活躍する女性ですが、家庭の温かさも大切にしています。
音楽とダンス
『メリー・ポピンズ』の魅力の一つは、その素晴らしい音楽とダンスにあります。シャーマン兄弟によって作詞・作曲された楽曲は、どれも耳に残るキャッチーなメロディーと、物語に沿った歌詞が特徴です。「チム・チム・チェリー」「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリアリドーシャス」といった楽曲は、映画を代表する名曲として広く知られています。
これらの楽曲に合わせたダンスシーンも、革新的で、アニメーションと実写の融合など、当時の技術の粋を集めたものでした。特に、バートが率いる煙突掃除夫たちのダンスシーンは、圧巻の一言です。
映像技術と革新性
本作は、公開当時、最先端の映像技術が駆使されていました。アニメーションと実写をシームレスに融合させる「トラム」と呼ばれる撮影技術は、観客に驚きと感動を与えました。メリー・ポピンズが絵本の世界に入り込むシーンや、バートが踊るシーンなどで、この技術が効果的に使用されています。
また、特撮技術も駆使されており、メリー・ポピンズが傘で空を飛ぶシーンなどは、子供たちの夢を現実のものとして描き出しました。これらの革新的な映像表現は、当時の映画界に大きな影響を与えました。
原作との関係
本作は、P.L.トラヴァースの同名の児童文学シリーズを原作としていますが、映画化にあたっては、原作とは異なる点も多くあります。特に、メリー・ポピンズのキャラクター設定や、物語の結末などは、映画独自の解釈が加えられています。しかし、原作の持つファンタジーの世界観や、家族の絆といったテーマは忠実に受け継がれています。
トラヴァース自身は、当初、映画化に難色を示していましたが、ウォルト・ディズニーの熱意と、ジュリー・アンドリュースのキャスティングによって、最終的に承諾したと言われています。
受賞歴と評価
『メリー・ポピンズ』は、公開当時、世界中で大ヒットを記録し、批評家からも高い評価を得ました。第37回アカデミー賞では、作品賞、主演女優賞(ジュリー・アンドリュース)、歌曲賞など、13部門にノミネートされ、歌曲賞、主演女優賞を含む5部門を受賞しました。
また、2013年には、アメリカ議会図書館によって「文化的、歴史的、芸術的に重要」な作品として、アメリカ国立フィルム登録簿に保存されることが決定しました。現在でも、数多くの映画賞でノミネートや受賞を記録しており、その評価は揺るぎないものとなっています。
関連作品と舞台化
『メリー・ポピンズ』の人気は、映画だけに留まりません。2004年には、ブロードウェイでミュージカル版が初演され、こちらも大ヒットを記録しました。その後、ロンドンをはじめとする世界各国で上演され、多くの観客を魅了しています。
2018年には、映画の続編となる『メリー・ポピンズ リターンズ』が公開され、再びその魔法の世界が描かれました。エミリー・ブラントが新たなメリー・ポピンズを演じ、往年のファンだけでなく、新しい世代の観客からも支持を得ました。
まとめ
『メリー・ポピンズ』は、単なる子供向けのファンタジー映画ではありません。家族の愛、成長、そして人生の喜びといった普遍的なテーマを、歌と踊り、そして魔法を通して描いた、心温まる作品です。ジュリー・アンドリュースの圧倒的な歌唱力と演技、バートとの息の合ったコンビネーション、そして世代を超えて愛される楽曲の数々は、観る者の心を掴んで離しません。公開から数十年を経た現在でも、その輝きは失われることなく、観るたびに新たな感動を与えてくれる、まさに不朽の名作と言えるでしょう。

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