Mr.オセロマン/2つの顔を持つ男

SF映画情報

Mr.オセロマン/2つの顔を持つ男

 映画「Mr.オセロマン/2つの顔を持つ男」は、2000年に公開されたアメリカのコメディ・ドラマ映画です。原題は「The Whole Nine Yards」であり、日本語タイトルには「オセロマン」という言葉が含まれていますが、チェスや将棋のような盤上ゲームの「オセロ」とは直接的な関連はありません。このタイトルは、劇中での登場人物の心情や状況の転換、あるいは「すべてをやり尽くす」「徹底的に」といったニュアンスを表現しているものと考えられます。

作品概要

 本作は、マシュー・ペリーが監督を務め、ブルース・ウィリス、マシュー・ペリー、ナターシャ・ヘンストリッジ、アマンダ・タッピングなどが出演しています。物語は、カナダのトロントを舞台に、歯医者のニコラス・“ニック”・オズランダー(マシュー・ペリー)が、隣に引っ越してきた伝説の殺し屋ジミー・“ザ・チューター”・ティブドー(ブルース・ウィリス)を巡る騒動に巻き込まれていく様を描いています。

 ニックは、妻から冷たくされ、借金も抱え、人生にうんざりしていました。そんな彼の前に現れたのは、かつて裏社会で恐れられた殺し屋ジミーです。しかし、ジミーは引退し、身を隠して静かな生活を送ろうとしていました。ところが、彼の過去が彼を追ってきます。ジミーの妻であるジル(ナターシャ・ヘンストリッジ)は、夫の過去の仕事仲間から逃れており、ニックに助けを求めます。

 この出来事をきっかけに、ニックの平穏な日常は一変します。彼は、ジミーの悪名高き過去と、その周辺で繰り広げられる数々の事件に否応なく巻き込まれていくのです。当初はジミーを敵視していたニックも、次第に彼との関わりの中で、自身の人生や人間関係を見つめ直し、変化していきます。

登場人物とキャスト

  • ニコラス・“ニック”・オズランダー:マシュー・ペリーが演じる、平凡で冴えない歯医者。妻との関係も冷え切り、人生に不満を抱えている。
  • ジミー・“ザ・チューター”・ティブドー:ブルース・ウィリスが演じる、引退した伝説の殺し屋。冷静沈着で、鋭い洞察力を持つ。
  • ジル・ティブドー:ナターシャ・ヘンストリッジが演じる、ジミーの妻。美しく、行動的だが、どこか危険な雰囲気を纏っている。
  • ソフィー・オズランダー:アマンダ・タッピングが演じる、ニックの妻。夫に対して冷淡で、自身の欲望のために行動する。
  • フランキー・セッツ:マイケル・クラーク・ダンカンが演じる、ジミーの元相棒で、マフィアのボス。

ストーリー展開とテーマ

 映画の核となるのは、平凡な男が非日常的な出来事に巻き込まれることで、隠されていた勇気や自己肯定感を発見していく過程です。ニックは、当初は恐怖と嫌悪感からジミーに近づきますが、ジミーの持つカリスマ性や、危機的状況での的確な判断力に触れるうちに、次第に尊敬の念を抱き始めます。

 「2つの顔を持つ男」という副題は、ジミーが「伝説の殺し屋」としての顔と、「引退して平穏に暮らしたい」という顔を持っていること、そしてニック自身も、妻の前での「無力な夫」の顔と、ジミーと行動を共にする中で見せる「勇敢な一面」を持っていることを示唆しています。

 物語は、コメディ要素とサスペンス要素が巧みに織り交ぜられています。ニックのコミカルなパニックぶりや、ジミーとのユーモラスなやり取りは観客を笑わせますが、裏社会の抗争や危険な状況は、緊張感をもたらします。特に、ニックがジミーの依頼を受けて殺し屋の仕事に手を染めていく様は、彼の人間的な成長と変化を象徴しています。

 また、夫婦関係や人間関係の歪みといったテーマも描かれています。ニックとソフィーの関係は、愛情が失われ、互いに隠し事をしている状態を示しており、ジミーとジルの関係は、互いの過去や秘密を抱えながらも、強い絆で結ばれている様子を描いています。

見どころと評価

 本作の最大の魅力は、ブルース・ウィリスとマシュー・ペリーの化学反応です。ウィリスは、クールで無表情ながらも、時折見せるユーモアと人間味あふれる演技で、ジミーというキャラクターに深みを与えています。一方、ペリーは、彼の代表的な役柄である「フレンズ」のチャンドラーを彷彿とさせる、コミカルで早口なキャラクターを好演しています。この二人の対照的なキャラクターが繰り広げる掛け合いは、映画全体を盛り上げます。

 また、ナターシャ・ヘンストリッジ演じるジルの、魅力的でありながらも謎めいた存在感も印象的です。彼女の登場が物語に更なる波乱を巻き起こします。

 アクションシーンも、派手すぎず、しかし緊迫感のある描写で、物語の展開を効果的に彩っています。特に、ニックが初めて殺し屋の真似事をするシーンなどは、緊張感とコメディが融合しており、観客を楽しませます。

 批評家からの評価は、賛否両論ありましたが、エンターテイメント作品としては一定の評価を得ています。特に、俳優陣の演技、特にブルース・ウィリスとマシュー・ペリーのコミカルな掛け合いは高く評価されました。ストーリー展開の意外性や、サスペンスとコメディのバランスの良さも、多くの観客に支持されました。

 映画のラストでは、ニックはかつての自分とは全く違う人物へと成長しており、自身の人生を主体的に生きる姿勢を見せます。この変化は、観客に勇気と希望を与えるメッセージとしても受け取れます。

その他

 「Mr.オセロマン/2つの顔を持つ男」は、続編である「Mr.ディーズ/2つの顔を持つ男」(原題: The Whole Ten Yards)も制作されており、こちらも前作のキャストが一部続投しています。

 本作は、派手なアクションや重厚なドラマを期待する観客よりも、軽快なコメディと、平凡な男が非日常に巻き込まれていく様を楽しむ観客に向いていると言えるでしょう。ブルース・ウィリスとマシュー・ペリーのファンであれば、間違いなく楽しめる作品です。

まとめ

 「Mr.オセロマン/2つの顔を持つ男」は、ブルース・ウィリス演じる引退した伝説の殺し屋と、マシュー・ペリー演じる平凡な歯医者が、予期せぬ出来事をきっかけに奇妙な友情を育み、裏社会の陰謀に巻き込まれていく様を描いたコメディ・サスペンス映画です。二人の俳優による軽快な掛け合いと、意外性のあるストーリー展開が魅力であり、エンターテイメント作品として楽しむことができます。平凡な日常に飽きた男が、非日常の世界に足を踏み入れることで、自身の隠された可能性に気づき、成長していく姿は、観る者に爽快感と共感を与えます。

コメント