映画:最後の脱出
概要
「最後の脱出」(原題:Escape from L.A.)は、1996年に公開されたアメリカのSFアクション映画です。ジョン・カーペンター監督がメガホンを取り、カート・ラッセルが主演を務めました。1997年公開の「ニューヨーク1997」(原題:Escape from New York)の続編にあたり、前作から15年後の世界が舞台となっています。
あらすじ
舞台は2013年。アメリカは、巨大地震によってロサンゼルスが島と化し、犯罪者や反体制派を収容する終身刑監獄「ロサンゼルス刑務所」となった世界です。政府は、この監獄島を管理するため、極端な統制社会を築き上げていました。主人公は、前作で活躍した元特殊部隊員、スネーク・プリスキン(カート・ラッセル)。彼は、ある事件の濡れ衣を着せられ、政府の陰謀によって強制的に「最後の脱出」ミッションを命じられます。そのミッションとは、大統領の娘がテロリストに誘拐され、秘密兵器と共にロサンゼルス刑務所島に潜伏しているというもの。スネークは、島に潜入し、大統領の娘と秘密兵器を奪還しなければなりません。しかし、島は無法地帯と化しており、様々な危険が彼を待ち受けていました。
登場人物
- スネーク・プリスキン(カート・ラッセル):主人公。冷徹で皮肉屋だが、どこか人間味も残る元特殊部隊員。
- エディ・ルービン(スティーヴ・ブシェミ):ロサンゼルス刑務所の管理者。
- サイアーズ(ステイシー・キーチ):アメリカ合衆国大統領。
- タンシェン(ジェームズ・ウッズ):テロリストのリーダー。
- パパ・ムーン(クリフ・ロバートソン):カリスマ的な指導者。
- カタリナ(ステファニー・ファラ):反政府組織のリーダー。
- エディ・アーチャー(ブルース・キャンベル):スネークの相棒。
特徴とテーマ
「最後の脱出」は、前作の暗く陰鬱な世界観を継承しつつ、より派手で過激なアクションシーンが特徴です。ジョン・カーペンター監督らしい、ディストピアSFの世界観、そして社会への風刺が色濃く反映されています。本作では、宗教的なカルト集団や、テクノロジーの暴走といった要素も取り入れられ、より複雑な社会の様相が描かれます。
スネーク・プリスキンというキャラクターは、正義感に駆られるヒーローではなく、自分の身を守るために行動するアンチヒーローとして描かれています。その行動原理は、時に過激で、観る者によっては賛否両論を巻き起こすかもしれません。しかし、そんな彼の不器用ながらも信念を貫く姿が、多くのファンを惹きつけています。
製作背景と評価
「最後の脱出」は、前作「ニューヨーク1997」の成功を受けて製作されました。しかし、興行収入や批評家の評価においては、前作ほどの成功を収めることはできませんでした。一部の批評家からは、前作の焼き直し、あるいは過剰なアクションといった指摘もありました。しかし、近年になってカルト的な人気を獲得し、ジョン・カーペンター監督のフィルモグラフィーの中でも独自の地位を築いています。
本作で描かれる、アメリカ社会の混乱や、権力による統制といったテーマは、公開当時から現在に至るまで、社会情勢を映し出す鏡として捉えられることもあります。特に、ロサンゼルスという、かつて「希望の象徴」であった都市が、犯罪者たちの隔離場所となるという設定は、現代社会における格差や分断を暗示しているかのようです。
続編の可能性
「最後の脱出」は、当初は続編の構想が複数存在していたと言われています。しかし、様々な要因が重なり、実現には至っていません。それでも、ファンの間では、スネーク・プリスキンの新たな冒険を期待する声は根強く残っています。
まとめ
「最後の脱出」は、ジョン・カーペンター監督とカート・ラッセルが再びタッグを組んだSFアクション映画です。前作から15年後のディストピア世界を舞台に、スネーク・プリスキンが過酷なミッションに挑みます。派手なアクションと、社会風刺に富んだストーリー、そして魅力的なキャラクターたちが織りなす本作は、公開当時は賛否両論ありましたが、近年カルト的な人気を誇る作品となっています。単なるアクション映画としてだけでなく、現代社会が抱える問題への示唆としても、改めて観る価値のある一本と言えるでしょう。


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