猿の惑星/征服

SF映画情報

映画:猿の惑星/征服(Planet of the Apes: Conquest)

作品概要

『猿の惑星/征服』は、2017年に公開されたSFアクション映画であり、『猿の惑星:新世紀(ライジング)』(2014年)の続編、そして『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』(2011年)から続く新シリーズの第三部にあたる作品です。監督はマット・リーヴスが務め、前作から引き続きシーザー役をアンディ・サーキスが演じています。本作は、人類と猿の間の壮絶な戦争の結末を描き、シーザーの苦悩と決断、そして猿たちの未来への希望と葛藤を深く掘り下げています。

あらすじ

前作で人類の軍隊との激しい戦いを生き延びたシーザー率いる猿たちは、サンフランシスコ郊外の森で静かに暮らしていました。しかし、猿たちの存在は、生き残った人類の軍隊によって脅かされ続けます。特に、「コーネリアス」という猿の子供を失ったシーザーは、人類への復讐心を募らせていました。

そんな中、元兵士である「ウッドロウ」率いる人類の残党が、猿たちの居住地を襲撃し、多くの猿たちが犠牲になります。ウッドロウは、猿たちを根絶やしにすることを目的としており、その目的のためには手段を選びません。シーザーは、猿たちの平和な暮らしを守るため、そして失われた仲間たちのために、ウッドロウ率いる人類軍と最終決戦に臨むことを決意します。

しかし、シーザーは次第に、人類への憎しみや復讐心に囚われる自分自身に苦悩します。かつて愛する者を失い、猿たちを導いてきた自身の経験から、復讐はさらなる憎しみしか生み出さないことを悟ります。彼は、猿たちの未来のために、より平和的で理性的な道を探ろうとします。

一方、人類軍の内部でも、ウッドロウの過激なやり方に疑問を抱く者も現れます。彼らは、猿たちとの共存の可能性を模索し始めますが、ウッドロウの権力とカリスマ性によって、その声はかき消されてしまいます。

物語のクライマックスでは、シーザーとウッドロウの壮絶な一騎打ちが描かれます。シーザーは、復讐の連鎖を断ち切るために、そして猿たちの誇りを守るために、究極の選択を迫られます。

登場人物

シーザー

知能が高く、猿たちのリーダー。当初は人類への復讐心を燃やすが、次第に理性と慈悲の重要性を悟り、猿たちの未来のために苦悩する。アンディ・サーキスのモーションキャプチャ演技が、キャラクターの感情の機微を豊かに表現している。

ウッドロウ

人類軍の冷酷な指揮官。猿たちを根絶やしにしようとする極端な思想の持ち主。シーザーとは対照的な存在として描かれ、人類の狂気や絶望を体現している。

モーリス

シーザーの忠実な右腕であり、賢明な猿。シーザーを支え、猿たちの結束を保つ役割を担う。

コーネリアス

シーザーの息子(実際には前作で保護した猿の子供)。彼の死がシーザーを復讐へと駆り立てるきっかけとなる。

ノバ

猿たちに保護される若い人間の女性。猿たちとの間に奇妙な絆が芽生え、物語の重要な要素となる。

テーマとメッセージ

『猿の惑星/征服』は、単なるアクション映画に留まらず、多くの深いテーマを扱っています。

復讐と赦し

シーザーの葛藤を通して、復讐の連鎖がもたらす悲劇と、それらを断ち切るための赦しの重要性が描かれています。憎しみは憎しみしか生まないという、普遍的なメッセージが込められています。

共存の可能性

人類と猿という、本来敵対するべき存在の間にも、理解と共存の可能性が示唆されています。ウッドロウのような極端な存在がいる一方で、ノバや一部の人々のように、猿たちに歩み寄ろうとする者も存在します。

進化と文明

猿たちが社会を形成し、独自の文明を築いていく過程が描かれます。知性を持つ彼らが、どのようにして倫理観や道徳観を育んでいくのか、その進化の過程が興味深く描かれています。

リーダーシップと責任

シーザーは、猿たちを導くリーダーとしての重責を背負っています。彼の決断が猿たちの運命を左右するため、その苦悩と責任感が強く描写されています。

製作と技術

本作は、「デジタル・ドメイン」による驚異的なVFX(コンピュータ・グラフィックス)技術によって、猿たちのリアルな動きや表情、そして感情をかつてないレベルで表現しています。アンディ・サーキスのモーションキャプチャ技術は、シーザーというキャラクターに命を吹き込み、観客に深い共感をもたらしました。

また、マイケル・ジアッチーノによる壮大な音楽も、映画の感動と緊迫感を高める上で重要な役割を果たしています。広大な自然の風景と、猿たちの雄大な姿を捉えた映像美も特筆すべき点です。

評価と興行収入

『猿の惑星/征服』は、批評家から非常に高い評価を受けました。特に、ストーリーの深さ、キャラクター描写、VFX技術、そしてアンディ・サーキスの演技は絶賛されました。興行収入も全世界で5億ドルを超え、商業的にも成功を収めました。

まとめ

『猿の惑星/征服』は、SF映画の金字塔とも言える作品です。単なるエンターテイメントに留まらず、人間の本質や社会問題にまで踏み込んだ、示唆に富む物語が展開されます。シーザーというキャラクターを通して、憎しみや復讐を乗り越え、より高次の存在へと進化していく姿は、観る者に深い感動と希望を与えてくれます。VFX技術の進化も相まって、猿たちの感情が生き生きと伝わってくるため、観客は彼らの物語に深く没入することができるでしょう。この作品は、人類の未来、そして「知性」とは何かを問いかける、必見の映画と言えます。

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